[市場動向]

「今度はSoftware Defined Application Services」、F5ネットワークスの古館正清氏が社長就任会見で強調

2015年6月12日(金)田口 潤(IT Leaders編集部)

以前はロードバランサー、現在はADC(アプリケーションデリバリー・コントローラー)と呼ばれるネットワーク機器の分野で高いシェアを持つ米F5ネットワークス。同社が、日本法人の社長就任会見を兼ねた事業戦略説明会を開催した。そこで強調されたのが「Software Defined Application Servicesの拡大」である。

 「Software Defined Application(SDA)Services」−−。これは何を意味するのか。広く知られるSDN(Software Defined Network)や、米ガートナーが提唱するSDA(Software Defined Architecture)、あるいは米IDCの「Software-Defined Infrastructure」などと、どう違うのか。何らかの示唆を与える言葉なのか、それともバズワードの1つなのだろうか。F5ネットワークスジャパンの会見から紐解いてみる。

写真1:米F5ネットワークス日本法人社長に就任したのは古館正清氏写真1:米F5ネットワークス日本法人社長に就任したのは古館正清氏

 日本法人の社長に5月1日付で就任したのは古館正清氏(写真1)。前職は米レッドハット日本法人、その前は日本マイクロソフト、さらにその前は日本IBMに在籍していた。同氏はF5に移籍した理由をこう語る。

 「マイクロソフトやレッドハットではOSに携わってきました。仮想化やクラウド化が進み、ITインフラはコモディティ化しました。以前に比べると便利になりましたが、問題もあります。アプリケーションとITインフラが分かれ、シンクロ(同期)しないことです。そんな時に知ったのが、F5の『SDAS(Software Defined Application Services)だったのです』。

 つまりSDASはF5が提唱する言葉であり、アプリケーションとITインフラを何らかの形でシンクロさせるものだ。古館氏によれば、「SDASはアプリケーションごとに最適なインフラをデザインできるようにする技術であり、概念です。例えばセキュリティが重要なアプリケーションとレスポンス性能を重視するアプリを、同一のITインフラで稼働させるのではなく、アプリケーションから見て最適なインフラを用意するといったこと」である。

図1:SDASが提供するのは、性能(Performance)、可用性(Availability)、セキュリティ、モビリティ、アクセスとID管理、の5つの機能図1:SDASが提供するのは、性能(Performance)、可用性(Availability)、セキュリティ、モビリティ、アクセスとID管理、の5つの機能
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 古館氏は、アプリケーションから見た時、インフラが提供するサービスは、性能(Performance)、可用性(Availability)、セキュリティ、モビリティ、アクセスとID管理、の5つに分類できる。これら5つを、ルールや外部サービス連携などを駆使しながらアプリケーションごとに最適設定できるようにするのがSDASの考え方だという(図1)。

 図1を見れば、レイヤーごとに分離したり垂直統合したりすること(ある意味で集中と分散かも知れない)は、IT技術の流れの中で常に繰り返されている。SDASは仮想化やクラウドによるレイヤー構造の利点をそのままに、統合の利点を持ち込む試みと言える。

 こうみれば技術的な仕組みはともかく、大きな目的は米Cisco Systemsが進める「ACI(Application Centric Infrastructure)」に類似しているように思える。その点について古館氏は「同じです。Ciscoと当社は協業していますし、インフラの技術はアプリケーションのニーズを満たす方向に向かうのは間違いありません」と話す。

 SDASの重要性を訴求するため、同社は5つの観点を軸にした成熟度モデルを作成し、企業が自己診断できるように公開する考えだ。「数十問の質問に答えると、レーダーチャート形式で平均とのかい離を把握できるモデルです。現在、5社に協力を頂いてチューニングしています。多くの企業に問題意識を持って頂くため、無料で提供する予定です」と古館氏はいう。

 米F5がSDASを提唱し始めたのは2013年11月のこと。そこでは、「Software Defined Data Ceter(SDDC)を実現するためにSDN、DevOps、Cloud、そしてSDASが必要だ」と説明している。ただし、SDASを実現するには原則としてF5の製品で構成する必要がありそうだ。この点が課題と言えば課題だろう。

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