[市場動向]
データセンターのスペース効率を測る「SpUE」―新指標の目的と価値は?
2015年7月17日(金)河原 潤(IT Leaders編集部)
データセンターのエネルギー効率指標として、電力使用効率を数値化するPUE(Power Usage Effectiveness)がよく知られているが、メトリクスの種類はそれだけではない。本稿では、ICTのエネルギー効率化に取り組む業界団体グリーン・グリッド(The Green Grid、本部:米国オレゴン州)によって2014年に策定された新しいエネルギー効率指標「SpUE」(Space Usage Effectiveness:スペース使用効率)」を紹介・解説する。
SpUEの“理論上理想値”はその企業次第

既存のPUE/CUE/WUEにはいずれも、理論上の理想値(PUE=1.0、CUE/WUE=0.0)が存在する。お馴染みのPUEであれば、分子と分母がイコールの1.0に近づくほど理想の電力使用効率ということになる。一方のSpUEには、理論上の理想値が存在しない。テラデータのデータセンター・アーキテクトでグリーン・グリッド中国支部のプレジデントを務めるデイビッド・ワン(David Wang)氏(写真1)は「PUE/CUE/WUEは、値か大きいか小さいかだけで示される1次元の指標だが、3つのパラメータから導き出されるSpUEは2次元の指標になっている」と説明する。
理論上の理想値が存在しないということは、企業や事業者が目指すSpUE値の方向は、それぞれの稼働環境や用途にとって異なってくることになる。ここが最大のポイントで、例えば、HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)用途で利用されるデータセンターの場合、ラック当たり高電力密度が求められ、収容率重視のデータセンターではラック当たり低電力密度が求められることになる。「したがって、SpUEの理論的理想値は、企業のビジネスとデータセンター/サーバールームのインフラストラクチャによって異なってくる」(ワン氏)というわけだ。
図4は、SpUEを用いてデータセンターのスペース効率を改善する際のシミュレーショングラフである。ここではAが改善前のSpUE、Bが改善後のSpUEを表している。グラフにあるように、改善前と改善後の差異が、PUEなどのような値が大きいか小さいかの単線表現ではなく三角形のかたちで示される。ここが、ワン氏がSpUEを2次元の指標だと表した部分だ。企業のデータセンター/ITインフラ担当者は、SpUEの算出式が描いた三角形のかたちを見ながらスペース効率改善を計画していくことになる。

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「『使用可能なスペースはもう限界に達している。だからこれ以上ラック数を増やすにはデータセンターを新築しなくてはならない』。こんな誤解が蔓延しているがそれは誤りだ」とワン氏は指摘する。SpUEを用いてスペースの使用のしかたについての最適化を図ることで、企業は不要な設備の追加を抑えながら、最大限のエネルギー効率の下でデータセンターを運用できるようになる」
第4の指標であるSpUEが、PUEのようにデータセンター/ITインフラの分野で世界的な認知を得られるようになるまでには時間がかかるだろうが、自社ITインフラの担当者、そしてIT投資のTCO(総所有コスト)に責任を持つCIOであれば注目しておくべきメトリクスではないだろうか。