米ガートナーは2015年8月18日(米国現地時間)、先進テクノロジー・ハイプサイクル(Emerging Technologies Hype Cycle)」の最新版となる2015年版リポートを発表した。今年のハイプサイクルの特徴は、デジタルビジネスやデジタルオフィスの中心に人間を置く「デジタルヒューマニズム」をサポートするテクノロジー群の台頭だ。
ガートナーの先進テクノロジー・ハイプサイクル(Hype Cycle for Emerging Technologies)は、近年登場した先進/新興技術がそれぞれどのような成熟度に到達しているのかを評価し、ハイプカーブと呼ばれる曲線上にマッピングしたITトレンド指標である(昨年と一昨年の記事はこちら:「問われる先進テクノロジーへの戦略―2014年版ガートナー・ハイプサイクルの見方」、「人間と機械の関係はますます密なものに―米ガートナーが2013年版先進テクノロジー・ハイプサイクルを発表」)。
同社は2015年版で、112の分野別ハイプサイクルを作成し、2000を超える技術を評価している。中でも先進テクノロジー・ハイプサイクル(図1)は、将来、自社のビジネスに影響を与える可能性のある先進/新興技術が市場において、現在どのフェーズにあるのかを測る指標として、各所で多く引用されている。
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先進テクノロジー・ハイプサイクルでピーク期に位置づけられた技術群は、近年ガートナーが掲げる「デジタルビジネスへの旅」で重要な役割をはたすものが多い。同社は、2015年版のハイプサイクルの特徴として、デジタルビジネスやデジタルオフィスの中心に人間を置く「デジタルヒューマニズム」をサポートするテクノロジーの台頭を挙げている。
今年のハイプサイクルの頂点付近、Peak of Inflated Expectations(『過度な期待』のピーク期)には、自律走行車が位置づけられた。2014年版ではピーク期の一歩手前、Innovation Trigger(イノベーションの黎明期)に位置していたものだ。「未発達の技術であるが、すべての主要な自動車企業が将来のロードマップに自律走行車を置くなどして進歩が著しい」(ガートナー)ため、ピーク期へのシフトとなった。
このほかピーク期には、IoT、セルフサービス型で結果を取得可能な先進分析、リアルタイム音声翻訳が並ぶ。マシンラーニング(機械学習)、ウェアラブル、コンシューマー向け3Dプリンタなどはピーク期を下り始め、ハイブリッドクラウドについてはThrough of Disillusionment(幻滅期)にさしかかっている。
企業のCEOやCIOが先見の明を持って注目すべきは、やはりイノベーションの黎明期だろう。今年のハイプサイクルには、ニューロビジネス、市民データサイエンス、SDS(Software Defined Security)、コネクテッドホーム、スマートロボット、感情的(Affective)コンピューティングなどが並んでいる。ガートナーのコメントのとおり、デジタルヒューマニズムに関連した技術が目立つ。同社はこの中でも、市場で新興企業と既存企業のソリューションが共に揃い始めたコネクテッドホームの進歩ぶりが著しいとしている。
米ガートナーのバイスプレジデント兼ディスティングイッシュトアナリストのベッツィ・バートン(Betsy Burton)氏は、「デジタルビジネス企業への転換の旅を続ける中で、適切な技術を識別し、適切なタイミングで採用することがこの上なく重要になる」と指摘している。先進/新興技術に対する適切なとらえ方、アクションの起こし方は、今日のビジネスリーダーやCIOにとっての素養だと言えるだろう。
【追記】2015年8月27日にガートナー ジャパンから、日本語に翻訳したハイプサイクル図が公開されたので参照されたい(図2)。
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