[松岡功が選ぶ“見逃せない”ニュース]

2016年2月の3本:IBM Watson日本語版/みずほ銀行が次期勘定系にクラウド採用/データを人質に金銭要求

2016年3月14日(月)松岡 功(ジャーナリスト)

2016年2月のニュースから松岡功が選んだのは、「IBM Watsonの日本語版提供開始」「みずほ銀行が次期勘定系にクラウド採用」「米病院がサイバー攻撃で金銭要求に応じる」の3本である。

IBMとソフトバンクが「IBM Watson」日本語版を提供開始

 日本IBMとソフトバンクが2016年2月18日、「IBM Watson」日本語版の提供開始を発表した(写真1)。Watsonは、AI(Artificial Intelligence:人工知能)技術を活用したコグニティブ(認知)コンピューティングを実現するシステム/サービスである。

写真1:記者発表会の様子。左から、日本IBMのポール与那嶺社長、ソフトバンクの宮内謙社長兼CEO、米IBM Watsonビジネス開発担当のマイク・ローディン シニアバイスプレジデント写真1:記者発表会の様子。左から、日本IBMのポール与那嶺社長、ソフトバンクの宮内謙社長兼CEO、米IBM Watsonビジネス開発担当のマイク・ローディン シニアバイスプレジデント
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 両社がWatsonの日本語サービスとして提供開始したのは、6つのAPI。「Natural Language Classifier(自然言語分類)」と「Dialog(対話)」「Retrieve and Rank(検索およびランク付け)」「Document Conversion(文書変換)」「Speech to Text(音声認識)」「Text to Speech(音声合成)」である。これらにより、ユーザーやパートナー企業はWatsonを活用したアプリケーションで日本語も扱えるようになった。

選択理由

 日本国内でもAI技術が実際のビジネスに本格的に活用される契機になり得ると感じるからである。AIはこれまで「人の脳を再現する最先端技術」として研究開発が進められてきた。これに対しIBMは、関連技術を活用しながら「人の思考や行動を支援する技術」としてWatsonを生み出した。同社がWatsonをAIでなく「コグニティブコンピューティング」と呼んでいるのは、使用目的の違いを明確にして、まさしく実際のビジネスに広く適用できるようにしたいという意図があるからだ。

 日本IBMとソフトバンクは1年前にWatsonの共同展開を発表し、日本語化や事業体制を整備するとともに営業活動も展開してきた。その結果、発表時点ですでに十数社の顧客企業を獲得し、さらに約150社からの引き合いがあるという。また、グローバルでのWatson事業は36カ国で展開され、29の業界において8万人を超える開発者が利用し、400社を超えるパートナー企業がWatsonを活用したビジネスを展開している。

 ユーザーの観点から見ると、国内では特に金融業界で2015年から2016年にかけ、業務にWatsonを導入する動きが目立った。みずほ銀行は2015年2月、三井住友銀行は2015年9月から、それぞれ一部のコールセンターに部分導入している。三菱東京UFJ銀行は2016年2月18日から、Watson日本語版を使い、LINE公式アカウントによるQ&Aサービスを始めている。

 他ベンダーによるAI関連の話題も連日のようにメディアを賑わせている。日本マイクロソフトの「りんなAPI for Business」、NTTドコモの「自然対話プラットフォーム」、東芝の「RECAIUS音声対話」などだ。ただ実際のビジネスへの活用に向けてはWatsonが現段階で最も幅広く身近なソリューションといえそうだ。

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