[イベントレポート]
「データを制するものが勝者」全社に広がるデータを利用者視点で管理せよ【Informatica World 2016】
2016年5月26日(木)志度 昌宏(DIGITAL X編集長)
データマネジメント関連ツールを開発・販売する米Informatica(インフォマティカ)が2016年5月23日から25日(現地時間)にかけて、米サンフランシスコで年次カンファレ ンス「Informatica World 2016」を開催した。株式の非公開化を選び、2016年1月に経営陣を一新して以後、初の大規模イベントだ。中核製品群「Intelligent Data Platform」を軸にクラウド対応を確実に進展。今回は、ビジネス部門におけるセルフサービス化をより強調する。5月23日の基調講演からデータマネジメントの動向を紹介する。
「データこそがトランスフォーメーション(変革)」を可能にする」−−。Informatica World 2016の初日(5月23日、現地時間)の基調講演に最初に登壇した米Informatica(インフォマティカ)の新CMO(Chief Marketing Officer)であるJim Davis(ジム・デイビス)氏は、こう切り出した。ビッグデータへの関心が高まり「データ駆動型経営」への変革が必要とされると同時に、デジタルによるビジネス創出への期待が高まる中では、的を射た指摘の1つと言えるだろう。カンファレンスのテーマとしても「Data Powers Business(データがビジネスを強靱にする)」を掲げる。
そのDavis氏が最初に提示したのが、企業におけるデータ活用のコンピテンシーモデルだ。「Individual(個人的)」「Forms(標準化)」「Unity(統一化)」「Discover(気づき)」「Innovate(変革)」の5段階からなる。5段階に目新しさはないものの、そこでのデータはデータ駆動型経営における「意思決定を支える資産」(同)に位置付けられる。
さらに、各企業がコンピテンシーモデルの段階を上れるかどうかを判断するための指標としてのベンチマークモデルも提示した。「People」「Process」「Leadership」「Culture」「Infrastructure」の5つの指標から測定できるとする。コンピテンシーモデルはITの側面が強いのに対し、ベンチマークモデルは組織の視点が強い。データ駆動型の企業になるためには、ITの整備に加え、経営層からスタッフまでの意識改革が不可欠というわけである。
最新テクノロジーの導入が組織や人の役割を変える
トランスフォーメーションに向けた人や組織の意識改革の重要性については最近、IT ベンダーの多くが主張し始めている。変革のために最新技術を導入するにはアーキテクチャーの見直しが不可欠になり、結果、各種組織の位置付けや役割が変わり、当然ながらスタッフの役割も変わらざるを得ないからだ。その流れは、インフォマティカが専業にするデータマネジメントの観点から見ても変わらない。
データ駆動型経営、つまりデータに基づく意思決定を全社に定着させるためには、データが重要なことは誰もが否定しないはずだ。だが、意思決定に資するデータであるためには、マスターデータの統合やデータ品質の確保など、全社レベルでのデータマネジメントが不可欠だということだ。不完全なデータからは誤った判断しか導けない。
加えて、IT環境のクラウド化によるビジネス部門が必要なリソースやデータを指定し活用するセルフサービス化が背景にある。十分にマネジメントされたデータも、最終利用者であるビジネス部門が最大限に活用できる形とタイミングで提供されなければ価値は生まれない。インフォマティカが2015年、非公開化を選んだのはクラウドを前提にしたビジネスモデルに舵を切るため(関連記事『データ基盤「Intelligent Data Platform」をハイブリッドクラウドに拡張』)。
Davis氏による組織改革への言及は、同社製品のクラウド対応が軌道に乗り、かつビジネス部門を対象にしたセルフサービス化に向けた取り組みが進展していることの自信の表れだとも言える。
データマネジメントは第3世代の「Data 3.0」に
データマネジメントにおけるセルフサービス化の流れを、Davia氏に続いて登壇した新CEOのAnil Chakravarthy(アニル・チャクラヴァーシー)氏は、第3世代を意味する「Data 3.0」と表現する。第1世代のData 1.0はETL(Extract/Transform/Load:抽出/変換/挿入)ツールによるデータ転送の自動化。第2世代の「Data 2.0」はERP(Enterprise Resource Planning)やSCM(Supply Chain Management)といったアプリケーション連携のためのマスターデータ管理やデータクレンジングなどである(写真2)。
これら2つの世代に対しData 3.0では、企業変革のための全社統一プラットフォームの実現と、セルフサービス化に向けた「Intelligence」の導入を目指す。つまり、機械学習といったAI(Artificial Intelligence:人工知能)関連技術を採り入れることで、意思決定に必要なデータを“必要な時に、必要な形で”提供、さらには「このデータが必要ではないか」とレコメンド(推奨)もする。Data 3.0で扱うデータは、「データのタイプや、データの発生から活用までのプロセス、クラウドを含めたデータの存在位置、そしてマネジメント手法が多様化しており、Intelligenceによるアシストが不可欠だ」(Chakravarthy氏)と言う主張だ。
Data 3.0でのインフォマティカの主張そのものは、同社がここ最近強調してきた「Intelligent Data Platform(IDP)」そのものであり目新しくはない。今回の基調講演では“必要な時に、必要な形で”データを提供・推奨する具体的なアプリケーションとなる「Intelligent Data Lake」を見せた。