[イベントレポート]

「データを制するものが勝者」全社に広がるデータを利用者視点で管理せよ【Informatica World 2016】

2016年5月26日(木)志度 昌宏(DIGITAL X編集長)

データマネジメント関連ツールを開発・販売する米Informatica(インフォマティカ)が2016年5月23日から25日(現地時間)にかけて、米サンフランシスコで年次カンファレ ンス「Informatica World 2016」を開催した。株式の非公開化を選び、2016年1月に経営陣を一新して以後、初の大規模イベントだ。中核製品群「Intelligent Data Platform」を軸にクラウド対応を確実に進展。今回は、ビジネス部門におけるセルフサービス化をより強調する。5月23日の基調講演からデータマネジメントの動向を紹介する。

 Intelligent Data Lakeは、IDP上で動作するデータマネジメントのためのアプリケーションの一種。全社に存在するすべてのデータをマネジメントすることで、必要なデータを取り出すためのデータの操作やワークフローの設定をビジネス部門のスタッフがGUI(Graphical User Interface)を使ってセルフサービスで実行可能にする(写真3)。これまで「Project Sonoma(開発コード名)」あるいは「Data Lake」と呼んでいた(関連記事『データ基盤のインテリジェンスなしにIoT時代のデータ活用は成り立たない』)。

写真3:Intelligent Data Lakeの操作画面例写真3:Intelligent Data Lakeの操作画面例
拡大画像表示

 ただ前年のイベント時からは、ビッグデータ環境においてHadoopに加えてSparkにも対応しストリーミングデータを含むリアルタイム性を高めたり、「Intelligent」を冠したように機械学習によるデータ検索やデータ推奨の機能を実装したりすることで、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)やデジタルマーケティングとなどの利用環境への対応を強化してきている。

 Intelligent Data Lakeをはじめ、IDP上で動作するアプリケーションを支える中核技術が「Live Data Map」である(写真4)。データに関するメタデータを知限管理することで、上述した“必要なデータを必要な形で”提供するための基本情報を提供する。

写真4:データマネジメントにおける「Live Data Map」の位置付け写真4:データマネジメントにおける「Live Data Map」の位置付け
拡大画像表示

 Live Data Mapも前回イベント時から提唱している。ただ前回は各種自社製品が持つメタデータを一元管理する機能に位置付けられていたが、最新版では、自社製品だけでなく、他社のRDBMS(Relational DataBase Management System)製品などやIoT/SNS(Social Networking Service)といった非構造データなどを対象にするほか、データの存在場所もメインフレームからクラウドまでに拡張した。

 多種多様な環境に対応できる点については、「過去20年以上、データマネジメントに特化し、20億ドル以上の研究開発費を投入してきた経験と実績によるものだ」(Chakravarthy氏)と専業ベンダーの強みを強調した。

データマネジメントの強化がビジネスモデル創出につながる

 Intelligent Data Lakeによるセルフサービス化を推し進めるインフォマティカ。データマネジメントへのAIの適用で、データスチュワードといったデータ活用の案内役の位置付けは大きく変わるはずだ。IT部門にしても、ワークフローなどもGUIで設定できるようになれば、データ活用に関与する場面は減るかもしれない。

 こうした見方に対しインフォマティカは、「Intelligent Data Lakeはビジネス部門とIT部門をつなぐもの」との立場を変えない。IT部門は、よりガバナンスやリスクマネジメントなどの領域にシフトできるとの考え方だ。そのための具体的な製品が「Secure@Source」になる。データ流出などのリスクに対し、アクセス権をデータ単位で設定したり、アクセス状況を把握して不審な振る舞いを検知したりを可能にする。

 CMOのDavis氏は、こうした役割のシフトをヘルプデスクの例を挙げて説明する。すなわち、「PCが起動しないとかシステムにログインできないとかいった問い合わせにヘルプデスクが対応しても、ビジネス上の価値はない。それらはデータ駆動経営の前提条件だからだ。データにガバナンスを効かせながら、ビジネス部門がデータに基づく意思決定ができて初めて価値が生まれる」というわけだ。

 Informatica World 2016では、基調講演に前後して利用企業が登壇するセッションも設けられている。詳細は省くが、多くの事例において、新しいビジネスモデルへのチャレンジや、製造/小売業におけるオムニチャネルのような顧客接点拡大といったプロジェクトにおいてマスターデータマネジメントなどを強化したり新たな体制を立ち上げたりしている点が印象的だ。

 利用企業の動向に詳しい業界関係者によれば、「事業構造や収益源の見直しなどのビジネスニーズからデータマネジメントに取り組む例が増えている。事業計画的にも試行錯誤しながらになるため、クラウド環境を含めたデータマネジメントへの関心が高まっている」。

 データ駆動経営といいながら、ビッグデータやIoTといったキーワードに流され、システムや組織のサイロ化/縦割り化から、なかなか脱しきれないのが実状ではないだろうか。データ駆動経営の実現方法はいくつもあるが、インフォマティカが主張するIDPやIntelligent Data Lakeなどのコンセプトや製品体系などを1つの尺度に、マスターデータやデータ品質の重要性など、アプリケーション視点から見れば、なかなか地味で、かつ効果測定も難しいデータにまつわる課題について、改めて意識を向ける必要があるだろう。

関連キーワード

Informatica

関連記事

トピックス

[Sponsored]

「データを制するものが勝者」全社に広がるデータを利用者視点で管理せよ【Informatica World 2016】 [ 2/2 ] データマネジメント関連ツールを開発・販売する米Informatica(インフォマティカ)が2016年5月23日から25日(現地時間)にかけて、米サンフランシスコで年次カンファレ ンス「Informatica World 2016」を開催した。株式の非公開化を選び、2016年1月に経営陣を一新して以後、初の大規模イベントだ。中核製品群「Intelligent Data Platform」を軸にクラウド対応を確実に進展。今回は、ビジネス部門におけるセルフサービス化をより強調する。5月23日の基調講演からデータマネジメントの動向を紹介する。

PAGE TOP