前編では、『「働き方」の教科書』の著者でライフネット生命保険・代表取締役会長の出口治明氏に、個人の働き方、組織の働き方についてとくと語ってもらった。後編となる今回は、システム戦略本部 システム運用部長 名代敏之氏にも登場を願い、ライフネット生命が推し進める「ITを活用したワークスタイル変革」の進捗を尋ねた。(聞き手・構成:河原 潤 写真:池辺紗也子)
B2CビジネスにおけるSNSの大きな効果を実感
――かっちりした情報ばかりでなく、思考のかけらのレベルの投稿でも後で何かのヒントになったりしますよね。ちなみに、次のツールはもう選定に入られているのですか?
出口氏:はい、4世代目としてスマホ対応を意識したツールの選定も進めています。もちろん、スマホ対応になれば、社内SNSの運用ルールも一部変わってきますので、セキュリティをはじめとする整備をしっかり行ったうえでの導入になります。
出口氏:社員の私物のスマホを使う場合、社外の人間が目にする可能性が増えますのでルールの整備は不可欠です。
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――SNSやスマホの活用は、今やワークスタイル変革には欠かせないですね。Twitterで5万5000超のフォロワーを持つ出口さんが自ら実践されています(画面2)。
出口氏:実は僕はITリテラシーが低くて、今でもキーボードは右手でしか打てないのです。Twitterは最初、若い社員からやりなさいと指示されて、いやいやながら始めたというのが真相です。こういうのは強制されないとまずやらないので(笑)。
でもやってみたら、面白かった。ライフネット生命のことをもっともっと知っていただきたいと思ってあれこれツイートしているうちに、実にさまざまな方とつながることができました。「ライフネット生命の出口って、何か変なおっさんだな」という感じで楽しんでもらえているかもしれません(笑)。
保険会社はB2Cのビジネスですから、大多数の方に知ってもらえないとなかなか売れません。そういう面でSNSが実に有効だというのは、部下から言われてやってみることで実感しました。
会議資料とワークフロー承認をペーパーレスに
――すでにライフネット生命の文化として定着した社内SNSのほかにはどんな取り組みをされていますか。
名代氏:4年ほど前、会議のペーパーレス化に取り組みました。社内ファイルサーバーにアクセスしてタブレットで資料を閲覧できる市販のソフトウェアを導入し、役員会議で活用しています。導入以前は、15~20人の役員会議の前日、コピー機でカラー印刷して、ホッチキスでとめて、事務局に渡すというプロセスでした。修正が入れば当日早朝に印刷し直すなど大変だった業務が、ペーパーレス化で大きく省力化されました。会議参加者は、タブレットで資料をめくることになります。シニア世代の役員にもすんなり使ってもらえています。
出口氏:当社には70代の役員がいますが、まったく問題ないですね。
名代氏:むしろ私が使い方を教えてもらうぐらい、使いこなしが進んでいます。気をつけていることはやはりセキュリティです。タブレットにはペーパーレス会議の資料ファイル自体は格納されておらず閲覧のみになります。また、オフィス内からのみアクセスできるようにしていて、仮に社外からタブレットを利用しようとしても資料にはアクセスできないように制御しています。
名代氏:なかでも緊急の資料修正がやむなく発生した場合でも会議に間に合わすことができるのが大きいですね。この場に議案を出す側にも非常にやりやすくなったと思います。会議に出席されている役員の方も、紙の資料を大量に渡されても、その後の保管にも困っていたでしょうし。
ペーパーレス化で言えば、ほかには、稟議書の提出・承認や経費精算など、従来、紙文書に判子を押す部分をワークフローシステムの導入で実現しています。
出口氏:昔は紙でやっていたことを、全部なくしたわけです。紙のコストも保管場所もいらないし、上長のところに持って行く手間もかからない。