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エクスポネンシャル(指数関数)エコノミーを理論的に分析、ナカシマプロペラの久保氏が企業の生き残り策を提唱

2016年11月21日(月)田口 潤(IT Leaders編集部)

クラウド活用ですら十分にできないのにビッグデータやIoT、AIなんてとんでもない。何よりも時期尚早であり、今取り組んでも苦労するだけ−−。こう考えるITリーダーは少なからずいるのではないだろうか?それに対し「今すぐに取り組むべき」という主張がある。2000年以前の考え方やアプローチでは、2000年以降の指数社会を生き残れないというものだ。

 「色々な事象を調べてみた。GDPやエネルギー消費量、車の生産台数などがその例である。すると日本も世界もほぼ例外なく、1950年を起点に2000年までは、すべて一定の伸びを示した(図3)。一定とはつまり直線的な、リニアな伸びである。しかし2000年を境に指数関数的な伸びを示す事象が増えてきた。世界のネット人口、新たに生み出されるデータ量、IoTデバイスの生産量などである。これらはそれ以前にはなかったものだ」

図3:1950年から2000年までは“直線(リニア)社会”だった図3:1950年から2000年までは“直線(リニア)社会”だった
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 こうした仮説を傍証するために久保氏が示した資料は5、6枚あるが、全部は示せないので図4で代表させたい(縦軸が対数であることに注意)。有名な「ムーアの法則(半導体の集積率は1年半〜2年で2倍になり、性能も向上する)」を引用しつつ、2000年を1つの変節点として、以前の50年と以降の50年が大きく変わったことを示している。つまり「2000年以前は直線的。しかし以降は10年で10倍変化する指数社会が到来した」(久保氏)という。

図4:2000年以降は指数社会が到来図4:2000年以降は指数社会が到来
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 「例えば米Boston DynamicsのAtlasは、2足で歩行し、倒そうとしても倒れないロボットである。ものづくりの世界でも、生産現場におけるAR(拡張現実や)PBR(物理ベースレンダリング)が実用化されている。どれも、実現するとしても、もっと先の話だと思われていた。それが想像より早く実現されるのが今日だ。これが社会や企業のあり方、あるいは日常の生活に影響を及ぼさないはずがない」

 本筋からは少しそれるが、こんな指摘もした。「ITが企業の生産性に寄与する、つまりIT投資と生産性には正の相関があるのは、いくつかの研究が示す事実だ。しかし気になる数字がある。2000年を挟んで、特に利用セクターにおいて日本と米国ではITの貢献度が真逆になっていることだ」。久保氏によれば、図5の違いをもたらす要因はインタンジブルアセット(目に見えない資産)。例えばデータの利活用やITを生かした業務プロセスの最適化、見直しといったものである。

図5:ITの貢献度に関する日米比較。利用セクターの傾向は真逆図5:ITの貢献度に関する日米比較。利用セクターの傾向は真逆
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 ITの活用が、効果が見えやすい給与計算や在庫管理などの定型業務主体から、それが見えにくいデータ分析やグループウェアのような非定型業務に移る際、日本企業はうまく生産性につなげられなかったということだろう。想像より早く不可能が可能になる指数社会の話を含め、とても大事な指摘であると言える。

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エクスポネンシャル / シンギュラリティ / デジタルトランスフォーメーション / ロボティクス / Boston Dynamics / 航空 / マシンラーニング

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