[中国電脳事情]

【中国電脳事情セレクション】“中国のAWS”Alibaba Cloud、ソフトバンクとの協業で日本上陸、ほか

2017年1月10日(火)足立 治男

中国メディア各社の報道から、IT関連の最新動向を紹介する「中国電脳事情」。1カ月間に報じられた主要なニュースから重要なものをピックアップしてお伝えする。

“中国のAWS”Alibaba Cloud、ソフトバンクとの協業で日本上陸

―DoNews(2016年12月15日)

 成長率で見ればAWS(Amazon Web Services)を上回る勢いとされるIaaS(Infrastructure as a Service)を、きっとご存じだろう。アリババグループ傘下で中国クラウドサービス最大手のAliyun(阿里雲、アリユン)だ。同社は浙江省杭州市の観光地、雲棲で開催したAliyun雲棲大会に続いて、広東省恵州市で同大会の広東分会を開催。会期2日目の2016年12月15日に、Aliyunの日本市場向けサービス「Alibaba Cloud」を正式にスタートしたことを発表した(画面1)。

画面1:“中国のAWS”Alibaba Cloudがついに日本市場でのサービスを開始した

 これは、Aliyunが現地にデータセンターを開設した上で提供されるローカルのIaaSで、中東、欧州、豪州に続いて海外4カ所目のスタートとなる。日本でのドメインはjp.aliyun.comで、同社とソフトバンクの合弁企業、SBクラウドが運営する。Aliyunによると、日本のデータセンターは東京都内に設置され、同社が独自に開発したハイパースケール対応OS、Apsara(飛天)での制御の下で各種サービスが提供されるという。

 Aliyunは、他のアジア各国に比べ、日本のクラウド産業の環境は最も成熟していると見ている。ソフトウェアアライアンス(BSA)による世界の主要クラウド市場評価ランキングで、日本は2012年から1位を獲得しており、AWSやMicrosoft Azureといったハイパージャイアントを擁する米国より上のランクにある。

 一方で、日本企業へのクラウドの普及率は、日本企業のIT分野全体の約10%程度にすぎないとも言われる。今後、クラウドが伝統的なオンプレミスシステムに取って代わる存在になっていくのであれば、日本市場の“伸びしろ”はそうとう大きなものになるだろう。

 日本市場に参入し、AWSやAzureと競争することについて、Aliyun副総裁である喻思成氏は「国際競争の中で、Aliyunの優勢はわが社が独自に研究開発した根底技術体系を筆頭に、安全性とAI技術の他、企業向けインターネットアーキテクチャにある」とコメントした。

 現在、ネスレ(スイス)、SASA(香港)、シンガポール郵政、Teridion(米)などの国際企業がAliyunのクラウドサービスを利用している。この他、Vodafone(英)、ソフトバンク、インテル(米)、PCCW(香港)、シンガポールテレコム、SKグループ(韓)、C&C group plc(アイルランド)などがAliyunと業務提携して現地におけるクラウドのローカルサービスを実施している。

工業・情報化省、「スマート製造」5カ年計画を発表

―新浪サイエンス(2016年12月7日)

 2016年12月7日、情報・工業化省と江蘇省政府の共同主催による「2016世界スマート製造大会」が南京で開幕した。同会では中国の国家戦略である第13次5カ年計画(2016~2020年)の一環となる「スマート製造第13次5カ年計画」が発表された。

 同計画では、スマート製造の更なる成長を長期的な戦略目標ととらえ、スマート製造に関するプロジェクトを多数実施して中心的技術の向上を図り、応用力を増加させ、新モデルを育成し、良好なる環境を整備するとしている。それにより中国製造業の競争力を向上させ、中国の国策である「製造強国」実現の基礎とするという。

 情報・工業化省の辛国斌副部長(副大臣)は、同大会の席上で、「インターネットを始めとする新世代通信技術を伝統的製造業と迅速に融合させ、通信革命と産業転換を加速させる。中国以外の世界の国々でもスマート製造に関する政策を打ち出しており、今やスマート製造は産業構造の転換と発展における方向となっている」と語った。そのうえで、「世界各国はこの新技術に係る課題に共同で取り組むべきであり、中国、米国、ドイツ、スウェーデンなどの各国と提携して、スマート製造の重点領域における標準化などの作業や、試験モデル、人的交流などを行うべき」との見解を表明した。

中国国務院、ブロックチェーン技術を5カ年計画に記載

―新浪サイエンス(2016年12月28日)

 2016年12月27日、中国国務院(日本の内閣府に相当)は、第13次5カ年計画(2016~2020年)の一環として、「国家情報化計画」を発表した。同計画では、2020年までに「デジタル中国」の建設で顕著な成果を上げるとした。そのうえで、中国の情報化能力を世界上位に位置づけるとしているほか、ブロックチェーン技術が国家5カ年計画に初めて盛り込まれることになった。

 同計画では、世界的な情報化の波は、その環境、条件、および内容において深刻な変化が発生しており、情報化の波は各方面に全面的に浸透し、業界を超えて融合し、全体を牽引して発展する「新段階」に入ったとしている。そのうえで、情報技術のイノベーションの周期は大幅に短縮され、イノベーションの活力や潜在的応用性などが放出されることで、新時代の科学技術革命と産業変革が引き起こされるという。さらに、IoT、クラウド、ビックデータ、AI、ロボット深層学習、ブロックチェーン、バイオなどの新技術により、インターネット空間を「人から人をつなげる」から「万物をつなげる」ものへと変化させ、すべての分野でデジタル化、ネット化、スマート化が実現されるという。

 近年、中国政府はブロックチェーンなどの最新技術動向を非常に重視しており、今回の5カ年計画への記載により、中国での研究開発だけでなく、中国社会における社会的な関心が一層高まることが予想される。

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