中国メディア各社の報道から、IT関連の最新動向を紹介する「中国電脳事情」。1カ月間に報じられた主要なニュースから重要なものをピックアップしてお伝えする。
中国産業用ロボットの年間生産台数が12万台に
―新華社(2017年12月13日)
中国でIT政策を司る工業・情報化省。同省で装備工業司(司は日本の局に相当)副司長を務める宇羅俊傑氏は、2017年12月13日に重慶市で開催された第2回国際ロボット測定認証サミットフォーラムの席上で、同年1-10月期における中国産業用ロボット生産台数が10万台を突破したことを報告した。前年同期比で7割増しの成長であり、2017年の年刊生産台数は12万台に達するとの見方を示した。
中国工程院(中国の技術分野における最高研究機関)の院士(技術分野で最高位を示す称号)である蔡鶴皐氏は、「中国ロボット産業の成長は急速だが、業界標準規格の未整備、測定手段の不足、権威ある第三者認証機関の未整備などの状況が続いている。一部の地域では盲目的な投資が行われ、市場全体の中で3の認知度も低い」と現状を指摘した。続けて同氏は、「今後も産業用ロボット業界への新規参入が相次ぐことになるので、諸課題に解決の手を打つことが急務だ」と語った。
中国にも関連した制度は存在している。2016年には国家発展改革委員会、国家品質監督検査検疫総局(AQSIQ)、工業・情報化省、国家認証認可監督管理委員会(CNCA)が共同で「中国ロボット認証(CR)」の運用を開始しており、今回のフォーラムでは、20社の産業用ロボット企業に対して認証書が交付された。また、同日付けで「中国ロボット認証実施細則」が公布され、中国ロボット測定認証情報フォームがオンラインで利用可能になった。
中国でロボット産業が次世代の産業革新における争点かつ焦点であるとの認識が広がっている。「中国製造2025」でも、産業用ロボットを国家の重点発展領域として明確にしている。なお現在、工業・情報化省は国家ロボットイノベーションセンターの設置準備を進めており、ここから産業用ロボットのコア技術の研究開発を主導し、産業チェーンの中・上流におけるコア部品の国産化の実現を図っていく構えだ。
鴻海ゴウ総裁「当社はEMSだけではなく、IoT・ビッグデータ領域でも国に貢献している」
―新浪総合(2017年12月7日)
「いつも講演などで、鴻海(ホンハイ)のことを『世界最大のEMS工場』などと紹介されることが多い。だが我々は、20年も前からすでにEMS以外の事業を手掛けている」――これは、2017年12月6日に広東省広州市で開催された2017年広州フォーチュングローバルフォーラムのステージに立った鴻海精密工業総裁のテリー・ゴウ(Terry Gou、郭台銘)氏の発言だ。
ゴウ氏は続けて、「早期よりAR(拡張現実)に取り組むことで、鴻海は豊富な経験を積み上げてきた。また、当社は伝統的製造業ではないので、顧客の状況にマッチしたきめ細かな対応が可能となる」と語った。例として、同氏は手にしていたペットボトル入りミネラルウォーターを指して、この容器が必要だと顧客から依頼があれば、私は即座にその材料やサイズなどをお伝えするだろう。しかも、トラブルの一切ない完璧な提案ができる」と力説した。
中国政府がインダストリアルインターネットを推進し、実体経済とインターネットが密接につながるようになった。「変革の中で、我々のようなIT企業は有する技術を中小企業に開放する必要がある」とゴウ氏。同氏によると、靴、服、金属など製品の種類にかかわりなく、あらゆる製造業がIoTシステムの構築や、ビックデータを利用した工場管理システムの導入などの目的で鴻海に相談に来るようになったという。
ゴウ氏はこのほか、米国ウィスコンシン州への投資や、日本のシャープ買収についても触れた。「シャープのように100年以上の歴史を持つ企業は、3代、4代目の経営者になる頃にすぐれた経営管理システムを構築している。こうした企業にとって市場シェアトップを目指すことは最も重要なことではなく、経営改善と安全な経営を求めている」(同氏)
ゴウ氏は最後に自社の従業員について次のように言及した。「現在、鴻海は世界12か国に工場を置き、130万名の従業員が在籍する。従業員番号はすでに1000万を超えている。つまり800万人以上の従業員が離職している計算になるが、彼らの多くは鴻海の管理技術とイノベーション精神を転職先にもたらしている。こうして我が社は、民間経済と実体経済の発展に寄与してきた」
中国でインダストリアルIoT市場が急速に成長
―経済日報(2017年12月19日)
2017年12月19日、中国IoTイノベーションフォーラムが開催された。このとき、中国の民間コンサルティング会社CCIDコンサルティング(賽迪顧問)が刊行する調査レポート「2017中国インダストリアルIoT産業白書」が公開された(訳者注:中国電子技術標準化研究院などが2017年9月に作成した「インダストリアルIoT白書」とは別のレポート)。
同レポートでは、2016年、中国のインダストリアルIoTの市場規模が1896億元(約3兆2642億円)に達し、IoT産業全体の約18%を占めるようになったことを示している。また、現在、中国政府によるIoT推進政策や民間企業のIoTへのニーズ急伸から、2020年にインダストリアルIoTの規模は4500億元(約7兆7473億円)、比率にして約25%に達すると予測している。
同社副総裁の李珂氏は、「インダストリアルIoTは、IoT産業全体の中で最も重要な分野になっている」とコメント。そのうえで、中国のインダストリアルIoTの課題について、以下の4点を指摘した。(1)センサー技術などIoTの基礎技術領域での研究開発の不十分、(2)ビックデータ解析などIoT活用技術スキルを有する人材の不足、(3)セキュリティやビックデータにおけるデータ所有権の問題、(4)企業間での導入状況のバラツキから生じる“IoT格差”の拡大(特に中小企業で顕著)。
これらの課題に向けた方策として、李氏は、「中国政府によるIoT成長予測の正確な掌握や、国産IoT技術の研究開発強化、海外からIoT関連の先進技術の導入」といった認識を示した。
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