[中国電脳事情]

【中国電脳事情セレクション】中国政府「トランプ氏のメイドインアメリカ政策は中国製造業の成長に影響しない」ほか

2017年3月3日(金)足立 治男

中国メディア各社の報道から、IT関連の最新動向を紹介する「中国電脳事情」。1カ月間に報じられた主要なニュースから重要なものをピックアップしてお伝えする。

2018年、越境ECの市場規模は約146兆円を突破へ

―北京商報(2017年2月13日)

 近年中国で急成長している越境ECビジネス。モバイルインターネットの市場調査に特化した香港iiMedia Researchは、同社の最新調査で越境ECの市場規模が2018年には8兆8000億元(約146兆100億円)に達すると予測されている。

 同調査によると、2016年に中国から輸出入されたEC(小売、B2Bを含む)取引高は6兆3000億元(約104兆5000億円)で、同年の「海淘ユーザー」(越境ECを利用して海外製品を購入したユーザー)数は4100万人に上るという。これが2018年には取引高8兆8000億元、海淘ユーザー数は7400万人になる見込みだという。年々増加する越境ECの取引高に合わせるように、越境ECの事業者数も年々増加している。

 iiMediaの調査以外にも注目すべきデータがある。IPC(国際郵便機構)の先日の発表によると、中国の消費者は他国の消費者よりもECサイトを頻繁に利用する傾向があり、中国の消費者の36%は、少なくとも毎週1回はECサイトで買い物をしているという。

 中国の消費者による越境ECの利用規模が拡大する一方で、EC事業者側の健闘ぶりにも要注目だ。IPCの調査では、アマゾン・ドットコム、eBay、アリババ3社の越境EC市場シェアは、越境EC市場全体の3分の2に相当するという。また、越境ECにおける商品供給元の地域として、すでに中国が世界最大の市場となっており、世界市場全体の26%のシェアを有するという。また、別の資料によれば、同商品供給元の地域として人気があるのは、主にアジア太平洋地域、カナダ、米国、中国であるという。

中国政府「トランプ氏のメイドインアメリカ政策は中国製造業の成長に影響しない」

―中国網(2017年2月17日)

 日本の内閣に相当する中国国務院の広報部門、新聞弁公室は2017年2月17日、定例記者会見の席上で、中国でIT事業を司る工業・情報化省の苗ウ部長(日本の大臣に相当)は、2016年の中国における工業・通信業界の成長状況を紹介。そこで、米国の新大統領ドナルド・トランプ(Donald Trump)氏の政策に言及した。以下、該当箇所を紹介する。

米ウォール・ストリート・ジャーナル記者の質問

 トランプ大統領が一貫して「メイドインアメリカ」を強調し、今後は米国製造業の海外生産拠点を本国に戻すことを奨励する政策が多発すると言われているが、中国も「メイドインチャイナ2025」などの政策を打ち出している。では、2017年に、これらトランプ政権のメイドインアメリカ政策に対応するための政策が出されることはあるか? また、新たな助成措置など、その他の関連政策はあるのか?

苗ウ部長の回答

 2015年に発表した「メイドインチャイナ2025」はここ10年間の製造業の成長に関する行動綱領である。もうこの政策を打ち出して2年近くになるが、とても良好な成果を上げている。そのため、我々がこのタイミングで新しい政策を打ち出すことはありえない。また、トランプ政権の政策に対応するために、新たな中国製造業の成長に関する政策を打ち出すことは、さらにありえないことだ。

 トランプ大統領が提唱している米国製造業の振興政策は、米国企業は生産拠点を米国本土に引き上げて、さらに多くの米国人を雇用することを奨励するというものだ。我々はこれらの政策について大変注目しているが、これらが、中国製造業の成長戦略に大きく影響することはないと考えている。

 私が思うに、工業、製造業全体の成長には内在的な規則性がある。中国製造業の工業体系は比較的完成されていて、そのコストも相対的に低くなっている。特に言えることは、ここに1つの巨大な市場があり、多くの工業製品をその販売地で生産するのか、非販売地で生産するのかについて選択する際に客観的な規則性があるということだ。また、中国の多くの産業は、産業チェーンが比較的完成されている。それは川上・川下産業の企業が拠点を引っ越す時において、絶対に考慮しなければならない要素の1つである。

 ご存じのとおり、中国は30数年前から一貫して改革開放政策を基本的国策として実施している。我々の対外的開放を今後さらに拡大する目標に一切変わりはない。これまでの我々の対外開放政策の多くは「海外からの導入」、つまり海外の企業を中国へ誘致して成長を実現するというものであり、我々は今後もこの政策を堅持する。

 だがそれと同時に、中国製造業の水準向上や総合的国力の向上により、我々は中国企業に対して積極的に「海外への進出」を奨励している。これは昔のように、ただ中国製品を海外に輸出して販売するというのではなく、多くの中国企業が直接海外へ投資をして、現地工場を建設し、現地で製品を生産・販売して成長するというものである。海外からの導入を取るか、海外への進出を取るか、いずれにしても最終的には企業が経営的判断で決定すること。我々のような政府機関が決めることではない。

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