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理研と東芝、NEC、富士通がAI開発の連携センターを開設

2017年3月13日(月)杉田 悟(IT Leaders編集部)

国内のAI(人工知能)リソースを集中―理化学研究所(理研)は2017年3月10日、東芝、NEC、富士通のそれぞれとAIの共同研究を行う仕組み「理研 AIP―東芝連携センター」「理研 AIP―NEC連携センター」「理研 AIP―富士通連携センター」を開設することを発表した。東京・日本橋の理研革新知能統合研究センター内に、各連携センターを設ける。同様の取り組みを3社以外にも拡大していき、国内におけるAIの一大研究拠点にしていく考えだ。

 理研AIP(理研革新知能統合研究センター)は2016年4月14日に、文部科学省が進めるAIP(Advanced Integrated Intelligence Platform)プロジェクトの研究開発拠点として設置された。AIPプロジェクトは人工知能、ビッグデータ、IoT、サイバーセキュリティの統合プロジェクト。

 一方、理研には企業からの提案をもとに、理研の各センター内に「連携センター」を設置し、中長期的なスパンで共同研究を行う「連携センター制度」がある。これを理研AIPに適用させたのが、今回の発表内容となっている。

 研究スキームとしては、理研が進めてきたAIに関する基礎研究と、各企業が開発してきたビジネスマターのAI技術を組み合わせて、向う5年間の長期的なスパンで次世代人工知能基盤技術の開発から社会実装までの研究を行う。設置期間は各センターとも2017年4月1日から2022年3月31日まで。

 理研、東芝合わせて30人体制でスタートする理研 AIP―東芝連携センターは、東芝の強みである半導体技術をエッジコンピューティングに適用させ、重要インフラを対象としたクラウドベースの人工知能を開発する。

 対象は「プラントの生産性向上」「知的生産性向上」「モビリティ自動化・ロボット化」。プラントの生産性向上では、システムの自動分析・最適化によるプラントの自律操業を目指す。知的生産性向上は、熟練者減少に伴う知識の継承という課題を解決するためのもので、作業記録やデータから継承すべき知識の抽出・発見・提示を行う。「モビリティ自動化・ロボット化」は、インフラの保守・点検作業の完全無人化を目指す。

 NECから10名を派遣して計20名体制で取り組む理研 AIP―NEC連携センターは、人を超える「認知」「発想」「最適化」の実現を目指す。事件・事故を未然に防ぐ予兆の発見(認知)や顧客ニーズに応えるヒット商品の開発(発想)、人やモノの移動の圧倒的効率化(最適化)などをAIで実現する。

 具体的には、希少な事例から高精度な学習を行うために、足りないデータを補う技術によって少量の学習データで高精度に認識できるようにする。また、未知状況での意思決定を支援するため、AIで多くの仮説をつくり飛躍した発想を導き出せるようにする。AIのトレンドのひとつである強化学習につていも、複数のAI間の自動交渉のためのアルゴリズムを確立させることを目指す。

 富士通の理研AIP―富士通連携センターは、最大の50名体制で臨むことを明らかにしている。同社のAIコンセプトである「Human Centric AI」に則り、「人が幸せになるAI、自律成長と人との協調による課題解決」を目指す。

 具体的には、ロバスト(頑健)な機械学習、AIを活用したシミュレーションの高速化、大規模知識の構造化という3つの研究を進める。活用分野は社会インフラ、ヘルスケア、ものづくりで、社会分野では新種の攻撃をAIで検知するサイバーセキュリティへの適合、ヘルスケア分野では難病や希少疾患への対処、ものづくり分野では新素材の開発や発見等に適用させる考えだ。

理研の清水センター長

 今回発表した3社はあくまでも、「現時点で連携が決定した最初の3社」(理研・革新知能統合研究センター・杉山将センター長)にすぎないとしている。「すでに多くの企業から連携の申し込みが来ている」そうで、今後連携センターのスキームを他社にも拡大していく予定だ。連携企業については、「外資系企業でも、条件が合えば受け入れる用意はある」としており、「日の丸AI」につながる取り組みであることは否定している。

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