サンジェイ・プーネン&マーク・ルシノビッチ─VeeamON 2017の大物ゲスト両氏が語った“クラウドの今”
2017年5月23日(火)五味 明子(ITジャーナリスト/IT Leaders編集委員)
仕事柄、米国で開催される大手ITベンダーの年次カンファレンスに参加する機会に数多く恵まれます。会期に合わせた新製品・新サービスの発表はもちろんのこと、イベントの目玉といえるキーノートにも注目が集まるのは毎度のこと。最前線で活躍する人物の発言からは、業界の動きがひしひしと伝わってきます。今回は、米ニューオーリンズで開催された「VeeamON 2017」のキーノートに登場した二人のキーパーソンにスポットを当てます。
毎年、4月から6月にかけては大手ITベンダーによる海外カンファレンスが数多く開催されるが、筆者は先週、米ニューオーリンズで行われたVeeam Software(以下、Veeam)の年次カンファレンス「VeeamON 2017(5/16 - 5/18)」を取材する機会を得た。Veeamは日本での知名度はまだそれほど高くないが、米国および欧州ではバックアップ&リカバリに特化したソフトウェアベンダーとして急激にシェアを伸ばしており、2016年度の売上は6億ドルに達する。
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今回はイベント全体のレポートとは別に、VeeamONのキーノートにゲストとして登壇した2人のゲスト - VMwareのCOOであるサンジェイ・プーネン(Sanjay Poonen)氏とMicrosoftでAzureのCTOを務めるマーク・ルシノビッチ氏の発言を紹介したい。クラウドの世界におけるスペシャリストとして知られる両氏だが、2017年現在のクラウドの世界を彼らはどう捉えているかに注目してみた。
VMwareが提唱するクラウド導入のための5つのガイドライン
プーネン氏がCOOを務めるVMwareは現在、自社IaaSとして提供してきた「vCloud Air」を売却し、パートナービジネスに完全に移管する体制を採っている。また、2016年には「VMware on AWS」をAWSと共に発表し、顧客のVMware環境をAWSのリソースでもってスケールするソリューションの提供を進めているのは周知の事実だ。
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自社によるIaaS提供から手を引く戦略を取ったVMwareだが、顧客に対しては現在どのようなクラウド戦略を推奨しているのか。プーネン氏は以下の5つのキーワードを示している。
- ハイブリッド - ハイブリッドクラウドは引き続き主流の一つとして継続する
- パラレル - (クラウドにシフトするなら)まずはSaaS戦略を固めるところから始め、次にIaaS、そしてPaaSと進んでいくべき。できれば並行して検討していくといい
- セキュリティ - クラウドではネットワークとデータ・セキュリティがキーになる。セキュリティは最初からアーキテクチャにビルドインすること。例えて言うならセキュリティは身体にとってのビタミンのような存在
- アジャイル - ウォーターフォールモデルは死んだ。バイモーダルITも死んでいる。世界は急速にアジャイルへとシフトしている
- フェイルフォワード - 失敗するなら速く失敗したほうがいい。挑戦せずにただ停滞するだけよりはずっとマシだ
クラウドコンピューティングが登場してから10年以上が経過するが、いまだにクラウド導入のタイミングやきっかけに悩む企業は少なくない。プーネン氏が示すガイドラインはおそらくデジタルトランスフォーメーションを地で行く先進的な企業にとっては目新しいものではないが、レガシーからの移行が進まないエンタープライズにとってはあらためて示唆となる部分が多いはずだ。
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