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「パッションこそがデジタル変革の源泉」―デンソー成迫剛志氏が語るシリコンバレー流の組織づくり

2018年10月29日(月)五味 明子(ITジャーナリスト/IT Leaders編集委員)

「カンブリア紀の生命大爆発のように、今、ITの世界では膨大な変化が急速なスピードで起こっている」――世界トップシェアの自動車部品メーカー、デンソーでMaaS開発部長兼デジタルイノベーション室長を務める成迫剛志氏の言だ。そんな時代に、日本企業はどのように対応し、デジタルトランスフォーメーションにつなげていくべきなのか。2018年10月19日に開催された「Dell Technologies Forum 2018 Tokyo」にゲスト登壇した氏のプレゼンテーションから、今、日本企業に求められている"変化に対応する組織づくり"について考えてみたい。

ITと自動車、2つの業界の「急激な変化」

 「生物の進化にたとえれば、現在のITはカンブリア大爆発のような時期を迎えている。変化のスピードは人々が思っているよりずっと速く、気がついたときにはカンブリア紀のように周りの何もかもが変わっている」。国内屈指のデジタルトランスフォーメーション(DX)の旗手として知られるデンソーの成迫剛志氏(写真1)がカンブリア紀になぞらえた現在のITの世界だが、具体的にどのような変化を迎えているのだろうか。

写真1:デンソー MaaS開発部長兼デジタルイノベーション室長の成迫剛志氏

 成迫氏は、「これまでのITは業務プロセスを支援する存在であり、業務プロセスが改善することで生産性が向上し、ビジネスに結果が出るという位置づけだった。だがDXの時代においては、ビジネスとITはクルマの両輪であり、ITなくしてビジネスは回らない」と述べ、かつてはビジネスの間接的な支援にとどまっていたITが、今ではビジネスと直結する存在になったことを強調する。

 だが、"ビジネスとITが直結"と聞いても、その感覚がわからない人も少なくない。成迫氏はその感覚のズレに対し、自動車が普及し始めた1900年代初頭の例を挙げて説明する(写真2)。

写真2:人々の感覚よりも変化は早く訪れていることを示す、20世紀初頭の自動車の普及。たった13年で同じ街とは思えないほど外観が変わった
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 1900年のニューヨーク5番街は馬車が通りを占領していた。当時は自動車の時代が来るとはだれも思っていなかったのだろう。だが同じ通りを1913年に撮影した写真には馬車は1台もなく、5番街は自動車で埋まっている。たった13年で、街のかたちは激変したのだ。成迫氏は「変化はリニアではなく、あるとき突然、急に始まり、一気に進む」と、ITの世界が急激な変化のまっただ中にあることをあらためて示す。

 そして、ITの世界だけでなく、デンソーが身を置く自動車業界もまた「100年に一度の大変革期」(成迫氏)を迎えている。成迫氏は今起こっている変化について、頭文字を取って「CASE+M」と表現し、加えてこれらの変化にはすべてITが深く関わっていると指摘する。

 Connected:つながる→飛躍的価値向上
 Autonomous:自動運転
 Sharing:所有から利用へ
 EV:電動化
 MaaS(Mobility as a Service):サービスとしての移動手段の提供

 ITと業界がどちらも、カンブリア大爆発のような変革を迎えている現在だが、成迫氏は「現在の延長線上に未来はない。イノベーションは違う次元で起こっている」と警鐘を鳴らし、単純な事業者視点や顧客視点だけでは、米ウーバー(Uber)のような劇的なイノベーション、すなわち車両を1台も所有しない時価総額13兆円ものタクシー会社の誕生は起こらないとしている。

IT業界も、自動車業界もかつてない急激な変化のまっただ中にある
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