現在、様々な企業がRPA(Robotic Process Automation)導入を検討しているといわれ、表に現れている以上に日本市場にRPAは根付いている。数年前にブームを経験している欧米では、RPAはどのように考えられているのか?現在ブームが来ている日本との違いは?過去の例を見ても、欧米の現状は日本の数年後を表しているといっても過言ではない。米アバナードは、RPAを含む業務の自動化に関する企業調査を、日本を含む8カ国で実施、2017年6月にその結果を公開している。
今回の調査結果を受けて、アバナードの安間裕社長は「日本ではRPA導入が話題になっているが、RPAをAI(人工知能)やチャットボットと組み合わせて導入するのが欧米の潮流」と説明する。欧米ではすでにRPAはコモディティ化しており、AIやチャットボットと組み合わせた次世代RPAの導入がトレンドになりつつあるというのだ。
この新たな潮流である、AI、拡張ワークフォース(チャトボットなど)との組み合わせで導入される自動化ソリューションのことを、アバナードではインテリジェント・オートメーション(IA)と呼んでいる。自動化のためのAI、チャットボットを包含したRPAなどがIAということになる。今回の調査はRPAではなく、このIAについて行われたものであることを、あらかじめお断りしておく。
大手コンサルティングファームであるアクセンチュアとマイクロソフトの合弁会社であるアバナードは、「マイクロソフトのプラットフォームを使用した革新的なサービスとソリューションを世界中の企業に提供すること」(アバナードHPより)を目的に、2000年に設立されている。
そのアバナードが行った「業務の自動化に関する企業調査結果」は、米国、英国、オーストラリア、カナダ、イタリア、ドイツ、日本、スウェーデンという8国800名のビジネスリーダーを対象に行われた。内訳は400名の企業幹部と400名のIT導入責任者で、期間は2017年5月から6月。
まず、IAの利用状況(図1)。「現在IAを利用している」と回答した8カ国の平均が31%。日本は5番目に多い20%。もっとも高い数値だったのがスウェーデンで61%だった。英国が次に多い54%、米国は39%、最低値はイタリアの16%だった。「現在IAを利用していないが、近い将来に購入予定」と回答した中で、もっとも多かったのがドイツの67%。日本も63%と高かった。「すぐの導入となると躊躇するが、数年後の導入には積極的になるという日本企業の特徴が出た結果だった」(安間氏)。
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次に注目したのがIAを導入することで得られる利点について(図2)。複数回答で、日本は意外にも「コストの削減」が29%と、もっとも低かった。米国も「コストの削減」がもっとも低かったのだが、こちらは42%あり、トップの「生産性の向上」が55%だった以外はいずれも40%台で拮抗している。米国では、幅広い領域にIA導入の利点を求めていることがわかる。日本はトップの「従業員エクスペリエンスとエンゲージメントの向上」でも43%止まりで、米国に比べると全体的に期待値は低いといえる。日米と逆だったのが、豪州とイタリアで、前者は52%、後者は66%で「コスト削減」への期待がもっとも高いという結果になっている。
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最後に、現状のプロセスに、IAを効果的に導入できた場合の、会社としての措置について、「従業員のパフォーマンス向上などで、現状の労働力を増加する」「現状の労働力の一部を置き換える」の2択で回答してもらっている(図3)。前者は、日本政府が唱える「働き方改革」につながるもの、後者はともすれば「労働者削減」とも取られかねないものだ。
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後者が前者を上回ったのは2カ国のみ。日本はその2カ国の中に入っている。数値はもう1カ国の豪州とまったく同じで前者が36%、後者が64%。今後労働人口が減少していくことが確定的な日本において、その減少分をIAが補うと考えれば合理的な結果といえるが、急速な発展を遂げるIAとソフトランディングな労働人口減少では、そのギャップを埋めることは難しそうだ。つまり、IAによって職を失う労働者が生まれてしまうリスクがあるということだ。
安間氏もこのことは懸念しているものの、「ITの導入に慎重すぎる日本企業の体質が、ここでは吉とでるかも」との見解を示している。つまり、日本ではIAの導入が他国ほどのスピードでは進まず、結果的にソフトランディングになり、労働人口減少と歩調が合うことになるのでは、というポジティブな考え方も可能ということだ。