IT Leadersは2012年5月にオープンソースソフトウェア(OSS)のカオスマップ「OSS鳥瞰図」を作成・公開している。様々あり多岐にわたるOSSを鳥の目で俯瞰的に理解できるように、という意図で作成したものだ。しかしOSSの進化は急ピッチである。そこに問題意識を持った日本OSS推進フォーラム クラウド技術部会が完全リニューアルし、「OSS鳥瞰図2017年α版」を作成した。本連載はこれに基づき、主なOSSをカテゴリ毎に解説している。第7回は「デジタルトランスフォーメーションとOSSの関係」に焦点を当てる。
デジタルトランスフォーメーション(DX)は、スウェーデンUmeå(ウメオ)大学のErik Stolterman教授が2004年に発表した論文「INFORMATION TECHNOLOGY AND THE GOOD LIFE(http://www8.informatik.umu.se/~acroon/Publikationer%20Anna/Stolterman.pdf)」において提唱された概念とされる。
論文タイトルから明らかなように、DXとはデジタル技術─ITと言い換えても良い─が、人々の生活のあらゆる局面で発生し影響を及ぼしうる変化、特に人々がより良い人生を生きられるような変革を指している。論文から13年以上を経た現在、ITは急ピッチで進化し続け、人々の生活に深く浸透した。物理的あるいは身体的に我々が認識している世界とさらに密接に接続され、そして蒸気機関や電力がそうだったように、劇的に世界を変えつつもある。
一方で概観すると単に「変革」と表されるものの、内実をよく観察すると個別の「変化」の程度は国や地域によって発展度が異なる世界地図を眺めるかのごとく、まだら模様を呈していることに気付く。日々、スマートフォンを用いながらも、今も各部門長から決裁印を集めて回る。工場ではロボットがフレームとなる複雑な形状の部品を数秒で溶接しているにも関わらず、単なる業務報告のために1時間を超える会議に縛られる…。このような実態は何の因果なのかと考えを巡らせざるを得ない。そう、まだらなのである。
OSSの活用はデジタル変革の必要条件
前置きが長くなったので、本論に入ろう。デジタル化とは経営環境の変化であり、そうである以上はすべての企業が適応しなければならない。創業10年に満たない企業の時価総額(企業価値)が100年以上存続している企業のそれを軽々と追い越し、2000年にフォーチュン500にランクされた企業の52%が2014年には現存しないという事実(*1)は、デジタル化とそれが巻き起こすDigital Disruption(デジタル破壊)の威力を雄弁に物語る。
DXは企業が顧客や取引先はもちろんのこと、製品やサービス、企業の従業員や働く環境に至るまで、あらゆる局面をデジタル技術を駆使して変革し、結果として企業価値を高めることを指す。では企業に必須のDXを推進するにあたって必要なコンポーネントは何か。その答の1つがOSSである。
帰納による蓋然性の導出には限界があるので、OSSを利用しさえすればDXに成功するという推論を積極的に採用するのは難しい。しかしDXに成功、あるいは先導している企業に共通するのはOSSの活用であることから、このことが必要条件の1つであると考えるのは誰にとっても易しいだろう。
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