日本OSS推進フォーラム クラウド技術部会は、IT Leadersが2012年5月に公開したオープンソースソフトウェア(OSS)のカオスマップ「OSS鳥瞰図」を完全リニューアルし、「OSS鳥瞰図2017年α版」を作成した。本連載はこれに基づき、主なOSSをカテゴリごとに解説している。第3回は「デスクトップ・業務アプリケーション」カテゴリに焦点を当てる。
オープンソースソフトウェア(OSS)と言えば、DBMSなどのミドルウェアやソフトウェア開発、システム運用に関わるツールなどIT専門家向け…こんな印象を持つ人は少なくないと思いますが、実は一般のユーザーが業務で直接利用するOSSも多数存在します。そのためOSS鳥瞰図2017年α版では「デスクトップ・業務アプリケーション」というカテゴリを設けています(図1)。
拡大画像表示
有名どころを挙げると、Firefox(ブラウザ)、Chromium(Chromeの元となったブラウザ)、Thunderbird(メール)、OpenOffice(オフィスソフト)、Aipo(グループウェア)、Zimbra(コラボレーションソフトウェア)、SugarCRM(顧客関係管理)といったOSSがあります。ユーザーが直接利用するため認知度が高くなりやすく、人気が出ると息の長いOSSになるものも少なくありません(図2)。
拡大画像表示
「特定用途に特化」したOSSが多く、同一のサブカテゴリのOSSでも用途は全く異なるのが特徴です。例えば、サブカテゴリ「デスクトップ」にFirefoxとThunderbirdという2つのOSSが掲載されていますが、前者はブラウザ、後者はメール、というように用途が全く異なります。しかしどちらもデスクトップで利用されるOSSということでこのサブカテゴリに掲載しています。
「特定用途に特化」しているにも関わらず、このカテゴリのOSSは非常に多機能です。実のところユーザーは通り一遍の使い方さえマスターしてしまえば問題なく使える、つまりマニュアルを読まなくてもそれなりに活用できますが、実際には使い切れないほどの機能を搭載しているものが多いという特徴があります。このことは、ユーザーによって使用している機能がかなり偏っているケースが多いことを意味しており、「すべての機能」に習熟しているユーザーは非常に少ないようです。そのため主なOSSには利用方法を尋ねたり、シェアしたりする情報共有目的のコミュニティが存在します。
2017年版デスクトップ・業務アプリケーションについて
OSS鳥瞰図の2012年版と比べた時、2017年α版ではどの程度差異があるのか。答を言えばなくなってしまったOSSはほとんどありません。これは他のカテゴリのOSSではあまり見られない特徴です。このカテゴリに属しているOSSのユーザーは操作方法も含めてよく理解し、習熟している面があります。そうしたユーザーは一般に「操作が変わる」ことを嫌うこともあり、1つのOSSに習熟すると同じ利用目的でも他のOSSにはなかなか移行しません。結果として長くそのOSSを支持するファンが存在しますし、当然、開発も活性化します。そのためWebブラウザのように同じ目的のOSSが複数並立し、活発に開発されることとなります。
会員登録(無料)が必要です
- OSSとデジタルトランスフォーメーションの関係──OSS鳥瞰図(2017/08/22)
- ビッグデータ分野におけるOSS最新動向─OSS鳥瞰図【第6回】(2017/07/27)
- セキュリティ分野における注目OSSとは?─OSS鳥瞰図【第5回】(2017/06/14)
- Web/APサーバー、DBMS、開発支援ソフトウェアのOSS鳥瞰図【第4回】(2017/05/19)
- オープンソースの運用管理ソフトウェア、OSS鳥瞰図【第2回】(2017/03/16)