最近よく聞く「データドリブン」という言葉。さまざまな活動から得られたデータの分析結果を次のアクションにつなげていくことだ。これを経営に応用したのが「データドリブン経営」で、そのための先進的なツールがセルフBIといわれている。日本を代表する巨大企業であるNTTドコモが高速データベースであるSAP HANAを導入し、世界でも最大級のデータ処理を開始したのが2017年3月。その導入の目的が、データドリブン経営の実現だ。SAP HANAとBIツールのTableauという組み合わせでデータドリブン経営に挑むNTTドコモの取り組みが、2017年9月8日に都内で開催された日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)のイベント「JUASスクエア2017」で紹介された。
NTTドコモのデータドリブン経営への取り組みを紹介する前に、NTTドコモの社内基幹システムの基本構成を見ておく。顧客向けのレイヤーにあるのが、顧客管理システムの「ALADIN」と料金システムの「MoBills」。社内向けシステムは会計人事システムの「DREAMS」と8万クライアントがつながっているイントラ基盤の「Dish」で構成、この2つを組み合わせたものを「DiDREAMS」ブランドとして外販も行っている。
(図1)NTTドコモ社内基幹システムの基本構成拡大画像表示
このALADIN、MoBills、DiSH、DREAMSにデータウェアハウス/データマイニングを加えたものを「リアルタイムマネジメントシステム」と呼んでいる。すべてのトランザクションはリアルタイムに処理され、各システムのデータベースを完全同期させている。お金の流れとデータの流れ、モノの流れとデータの流れが完全に一致しており、システムのデータを見れば現実の経営の姿がリアルタイムにわかる状態にあるという。
その規模もすごい。端末台数はALADIN、MoBillsが約4万7千台、DiSH、DREAMSなどが約7万9500台で合計約12万6500台。サーバー数はALADINの約1460台、MoBillsの約910台など合計4620台、ディスク容量は合計6万3140TB。トランザクション数もALADINが1日約3000万、MoBillsが約11億7千万、Dishが約1億7000万PVなど。
(図2)リアルタイムマネジメントシステムの規模拡大画像表示
リアルタイムマネジメントシステムには、あらゆるオペレーションの膨大なデータが格納されている。NTTドコモ情報システム部情報システム部長の長谷川卓氏は、「これらのデータを活用して企業競争力を向上させていくことがNTTドコモが考えるデータドリブン経営」だとしている。
例えばNTTドコモでは、会社がスタートした25年前から一貫して、顧客ひとりひとりが「いつ、どのチャネルで、何の注文をしたか」といった「ツブツブのデータ」を蓄積してきた。このツブツブのデータがすべて可視化されれば、どこに問題があり、どこが支持されているのかがわかるかもしれない。それがデータドリブン経営の基本だ。
データドリブン経営に2つの目的
NTTドコモのデータドリブン経営を説明する情報システム部の長谷川卓情報システム部長長谷川氏によると、NTTドコモのデータドリブン経営には2つの目的があるという。ひとつめが「業務プロセスの改善」。先行指標としてオペレーションデータを可視化することでプロセス上の課題を早期に発見し、目標達成に向けた改善を行っていく。
例えば、売上データや財務データは、結果を表したデータであり、われわれは得てしてこれら集計済みの加工されたデータだけを見ている場合が多い。長谷川氏は「集計の元となっているデータにこそ問題や課題解決のベストプラクティスが隠れていることがある。それが集計されることにより見えなくなっている可能性がある」と指摘、「集計前のデータをつぶさに見ることによって、課題・ベストプラクティスを発見できるようにしたい」としている。
ふたつめは「顧客理解の深化による"サービスの創造・進化"」。システムが保有している顧客情報を一元的に管理し分析・活用することで顧客を深く理解し、快適・安心なサービスの創造・進化につなげる。「顧客とのつながりを、より強固にしたい」という。
NTTドコモでは、実は20年も前から同様の思想でデータ活用に取組んできたが、「色々な壁があり実現できなかった」という。有効なデータ活用を阻む最大の壁となったのが人材不足と、性能・コストの問題だ。
人材面では、NTTドコモでは15年前に専門チームを立ち上げ、2010年からは100名体制でデータ分析に取り組んできたが、本物のデータアナリストはなかなか育っていない。性能面では、大量のストレージ、サーバーを並べればそれなりに高速化は可能だが、莫大な投資が必要となる。
これらの課題について長谷川氏は「ハードウェア、ソフトウェアの技術の進歩が解決してくれる」と断言する。例えばデータアナリスト不足は「機械学習やAIを活用することで、データ分析に専門知識が必要なくなる。自分の専門知識を最大化するために、自らデータを活用できる日が2020年までには訪れるはず」という。
●Next:新たに可視化基盤を導入
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