富士通は2017年10月23日、一般財団法人日本自動車研究所に、自動車の衝突シミュレーション用計算機の新システムとして、液浸冷却システムを採用したPCクラスタを提供し、2017年10月から稼働を開始したと発表した。
今回導入したPCクラスタは、計算サーバーとしてモジュラー型の「FUJITSU Server PRIMERGY CX400 M1」(シャーシ)と、16台のサーバーノード「PRIMERGY CX2550 M2」(合計32CPU、192コア)を採用した。これとは別に、管理サーバーとしてラックマウント型の「PRIMERGY RX2530 M2」を使う。
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最大の特徴は、サーバー類を不活性液体内に直接浸すことによって熱輸送能力を高めた、液浸冷却システムを採用したことである。サーバー内部の冷却ファンとサーバー室の空調設備が不要になる。さらに、冷水設備の水温を高めに設定可能にすることで、従来システムと比較して消費電力を約40%削減できるとしている。
富士通では今後、不活性液体内でIT機器を冷却する液浸冷却システムを、グローバルに提供していくとしている。
自動車の衝突シミュレーションを低消費電力で実施
日本自動車研究所は、今回導入したPCクラスタを、非線形動的構造解析ソフト「FUJITSU Technical Computing Solution LS-DYNA」などの計算機として活用する。これにより、これまで以上に現実に近い緻密な人体モデルの開発や、大規模な衝突のシミュレーションが、より低消費電力で可能になる。
日本自動車研究所は、コンピュータ上で再現した車両や人体を用いて行うシミュレーションと、実際の車両や人体ダミーなどを用いた実験によって、自動車が衝突した際の乗員や歩行者の安全性、傷害メカニズムなどを研究し、自動車業界に広く研究結果を提供している。
「コンピュータでのシミュレーションは、実際の人体ダミーを用いた実験よりも多くの情報が得られるため、今後の自動車の改良や開発にも大きく貢献する。より精度の高いシミュレーションを低消費電力で実行するシステムとして、液浸冷却システムを用いたPCクラスタシステムを採用した」(日本自動車研究所)