[市場動向]

AIが進化すればRPAも進化する―次世代RPAとは

2017年10月27日(金)杉田 悟(IT Leaders編集部)

ソフトウェアロボットがホワイトカラーの定型業務を肩代わりする。これが日本で知られるRPA(Robotics Process Automation)の一般的な役割だ。国内で多くのRPAプロジェクトを請け負うITコンサルティング会社アバナード(Avanade)のテクノロジーサービス統括ディレクター鈴木淳一氏によると「一歩先にRPA導入が進む欧米ではすでに次の段階を見据えた次世代RPAの動きが出てきている」という。また、RPAの進化にはAIが密接に係わってくることも指摘している。次世代RPAとはどのようなものなのか、RPAとAIの関係を鈴木氏に聞いた。

 KPMGが2016年に発表したホワイトペーパーでは、RPAには3段階があり、段階1が「定型作業の自動化」、段階2が「一部非定型作業の自動化」、段階3が「高度な自律化」と定義している。

図1:3段階のRPA(出典:KPMG)
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 段階1は、プロセスやルールが固定化された業務をルールエンジンやワークフロー、画面認識技術等で自動化するもの。段階2は、例外対応や非構造化データ処理の一部を自動化するもの。段階3は、高度な人工知能により、業務の分析・改善から意思決定までを自動化するものとなっている。

 アバナードでも同様にRPAを3つの段階で捉えており、定型的な大量のエントリー業務をルールベースで自動化するものを「RPA 1.0」、画像認識や文字認識を駆使して対象を読み取り、コグニティブで次のアクションへの意思決定をするのが「RPA 2.0」。

 現在のRPAに「弱いAI」を掛け合わせたものが第2世代のRPAといわれることが多い。OCRやチャットボットを組み合わせて提供するもので、「欧米でも大規模事例はさほど多くない」という段階だ。

 OCRを組み合わせた場合、例えば手書きの契約書の文字を読み取ってシステムにエントリーする。国内でもRPAとOCRを組み合わせたサービスは提供されているが、AIが加わることで、単に文字を認識するだけでなく文字の流れや帳票の場所などからの推測も加えることで認識率を上げたり、例外処理に対応したりできるようになる。日立製作所が開発に着手したことを2017年6月に発表した「AI技術を活用したRPAシステム」がこれに近い。

 チャットボットと組み合わせた場合、RPAは裏方となる。チャットボットは、人とのチャット形式の会話を自動的に行うAIロボットのことで、コールセンターなどでの導入が増えてきている。あくまでも会話を行うのはチャットボットで、RPAはプロセスをつなげるだけ。

写真1:アバナード テクノロジーサービス統括ディレクターの鈴木淳一氏

 いずれの例でも、登場するのは「弱いAI」だ。これが「強いAI」になると、RPA 3.0となるわけだが、鈴木氏は「その機能のほとんどはAIに依存するので、RPA 3.0というより、AIの中に完全に取り込まれてしまうのではないか」という。

 RPAの文脈で語られる「強いAI」とは、自ら意思決定する自律性の高いAIのことで、まだ市場には登場していない。AIが「強いAI」まで進化してくればその存在感は高まるばかりで、RPAはAIができることの1機能にすぎなくなっているというのだ。一方、「強いAI」が誕生しなければ、RPA 3.0も誕生しないということにもなる。

 それでは、BluePrismのようなRPAベンダーが自社のRPAに搭載するためのAIを開発するのかというとそうでもないようだ。「買収する可能性は否定できないが、AI開発に投資することは考えにくい」というのだ。

 「RPAベンダーは、いかにプロセスを自動化させるかを考えている。AIに関してはオープンな立場で、どんなコグニティブサービスとでも、どんなAIとでも連携できるハブ製品になっていくのではないか」というのが鈴木氏の考え方だ。

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