[ユーザー事例]
カブドットコム証券がAPI基盤をAWSクラウドで刷新、“真にオープンなFinTech”を目指す
2018年8月10日(金)五味 明子(ITジャーナリスト/IT Leaders編集委員)
カブドットコム証券は2018年8月7日、同社が構築するAPI基盤「kabu.com API」を刷新し、AWS(Amazon Web Services)のIaaS上で稼働開始することを発表した。基盤のクラウド移行はほぼ完了しており、すでに多くのAPIや関連ツールがAWSクラウド上から提供されている。この日同社は、次世代のFinTechプラットフォーム構築に向けてクラウドファーストで臨む姿勢も明らかにした。
創業以来、証券取引システムをはじめとするほぼすべてのシステムを自社で構築してきたカブドットコム証券。同社のITプロジェクトをトップみずから牽引してきたのが、代表執行役社長の齋藤正勝氏(写真1)だ。同氏は、API基盤「kabu.com API」刷新の経緯をこう話す。
「セキュリティや可用性、開発効率に対する要求が日々高度化している。FinTechの裾野を広げるAPI基盤としての役割を果たすには、自社丸抱えでは限界がある。APIを叩くだけでFinTechに参入できる環境を整備するためにも、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)で実績のあるAWSクラウドをkabu.com APIの基盤に採用した」
カブドットコム証券が外部事業者に対して提供するkabu.com APIは、株式や先物、オプション取引などに特化したオープンなAPI基盤だ。相場情報や発注系、残高照会といった、従来までは証券会社のツールを通してしか得られなかった情報や機能をAPI化し、FinTechスタートアップやプロップファーム、投資助言事業者、さらにはツール開発事業者やゲーム開発事業者など、さまざまな業態の事業者に開放している。
これらの事業者は、kabu.com APIから提供されるAPIを介して、それぞれのユーザーニーズに最適化されたフロントエンドツール/サービスの開発に注力することが可能となる。現在、証券系のAPI基盤をオープンなかたちで提供している国内証券会社はカブドットコム証券だけだ。
齋藤氏によると同社は今回、約7カ月の期間をかけ、これまで自社環境で構築/運用してきたkabu.com APIをAWSクラウドに移行。新たにOAuth 2.0をベースにしたアクセス権限認証方式を採用してセキュリティ強化を実現している。また、kabu.com APIを活用してツール提供を行ってきた有力サードパーティー事業者にも移行プロジェクトへの参画を仰ぎ、ユーザーニーズの洗い出しやAPIの改良などを実施、よりスケーラブルで使いやすいAPI基盤の構築を図っている(写真2)。
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