「仕事はたくさんあるのに人材が足りない」。国内でも引く手あまたの活況に見えるITサービス(情報サービス)業界だが、一皮めくると異なる姿が見えてくる。利益水準が低く、IT人材の処遇や教育投資はもちろん、R&DやM&A投資を十分に行えないという実態だ。一般企業の情報システム子会社となると状況はいっそう厳しいはずで、切れ間なく仕事が入ってくる今のうちに抜本的な手を打つ必要がある。そのカギとなるアプローチの1つが「PSA」である。
海外と日本の大手ITサービス企業の収益力には大きな差がある。少々古いが2016年の実績で見ると、米IBMのサービス部門は38%、米アクセンチュア(Accenture)が14%、インド最大手のタタ・コンサルタンシー・サービシズ(Tata Consultancy Services:TCS)が25%など軒並み2ケタ台の売上高営業利益率を達成している。これに対し日本では、野村総合研究所(NRI)やCSKなど一部を除けば1ケタ台にとどまる(図1)。デジタル化などビジネスを取り巻く環境が急速に変化する中で、この事実はR&DやM&A投資、エンジニアの採用や教育に影響する。
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「サービス」のとらえ方の大きな違い
この差は何から来ているのか。シリコンバレー在住で日米の情報サービス産業に詳しい山谷正己氏(米Just Skill代表)は次のように指摘する。「さまざまな理由がありますが、1つ大きいのは“サービス”のとらえ方です。日本ではサービスを無料のものととらえがちですが、海外では有料が当たり前。サービスを収益の源泉と見なして強化しています」
図2は「サービス」を巡るビジネスカルチャーの違いを比較したものだ。ここに示すように、“High Context Culture”の日本では相手の意向を察知し、忖度しながらできるだけのことをやるのが普通。サービスは無料であり、それで儲けるという発想が弱い。欧米は逆で契約に書かれたことはやるが、それ以外のサービスは求める相手(顧客)に対して有料で提供する。この儲け方の違いが収益力の差につながっているというわけだ。
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だとすると、ビジネスカルチャーの違いが根底にあって、日本の情報サービス企業には、この先大して工夫の余地がないのだろうか。山谷氏はそうではないと話す。「欧米でも昔は日本とそう変わりませんでした。しかし過去20年の間に、専門知識やノウハウ、技術力などを源にしてクライアントの問題解決や価値提供を行うプロフェッショナルサービスへの移行が進みました。20年前も今も工数の提供を主体とする日本のITも、そろそろ変わる時期でしょう」(山谷氏)
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