[インタビュー]

「データ分析はツール導入より先に人を育てよ」―日産の社内変革を支えた柏木吉基氏が言う「ソフトスキル」とは?

2018年8月23日(木)谷畑 良胤(IT Leaders編集委員/教育事業推進室プロデューサー)

企業内のデータが爆発的に増え、これを有効活用しようとするニーズが高まっている。データ分析をする手段として、ビジネスインテリジェンス(BI)などのツールを導入する企業も増えている。その一方で、思ったような成果が出ていないという声をよく聞くが、それはなぜなのか。日産自動車のカルロス・ゴーンCEO(当時)をはじめ、多くの役員の経営課題を解決してきたデータ&ストーリーLLC代表の柏木吉基氏によれば、「ソフトスキル」が不足しているためだという。企業がデータを有効活用するための人材育成や組織づくりはどうあるべきか。柏木氏にそのポイントを聞いた。

企業はデータをほとんど使えていない

――柏木さんは現在、自ら経営するデータ&ストーリーLLCで、データ分析やロジカルシンキングに関する研修を展開しています。こうした研修を、企業や自治体などに提供する会社を設立するまでの経緯を少しお聞きします。ビジネスマンとしては最初、日立製作所に入社され、その後、経営学修士(MBA)を取得していますね。

写真1:データ&ストーリーLLC代表の柏木吉基氏は、実務経験と実績に基づいた研修プログラムを展開する

 日立に在籍していたときは、顧客と開発とをつなぐ「技術営業」をしていました。普通に実務をこなしていると、その範囲のことは学べます。しかし、「ビジネスに必要なことは、それ以外にもある」という課題意識がありました。

 それを体系的に学びつつ、2003年にMBAを取得しました。留学中の2002年頃は、日本全体が不景気に陥っていた時期です。その影響もあり、私が所属していた日立の情報通信事業部も子会社化されました。大企業の日立に入社すれば、多方面の業務ができると期待していましたが、子会社化されたことで日立本体と人事的につながりが薄くなり、思い切ったジョブローテーションが叶わなくなりました。

――日立の事情があり、課題意識をMBA取得というかたちで行動を起こしたわけですね。日立を退社後、日産自動車に転職していますね。どんな実績を上げてこられたのですか。

 いくつもの事例がある中で、わかりやすい例を挙げます。当時、ルノー・日産アライアンスのCEO(最高経営責任者)であったカルロス・ゴーン氏が、世界約120カ国のパートナー(各国1社のディストリビューター)すべてを同氏の視点から評価するための評価基準や評価体制、方法論などを作り、パートナーネットワークの最適化に貢献しました。それ以外にも、日産の高級車ブランド「インフィニティ」のグローバル本社を香港に設立するなど、グローバル組織の中で経営課題をいくつも解決してきました。

――その後、日産を辞めて、2014年に現在のデータ&ストーリーLLCを設立しました。どんな理由で独立を決意したのでしょうか。

 (日立や日産で)やり切った感があったことと、自分のスキルをより広く世の中の役に立つかたちで提供したいという気持ちがありました。さらには、大学から非常勤講師のオファーをいただき、昔からやりたい仕事でしたので、迷いなく独立を決意しました。日産時代は、今でいう「副業」として講演などをしていました。研修や講演などの活動では“10年選手”なんです。書籍を上梓したのも、日産時代が最初です。

――データ&ストーリーLLCでは、どんな事業を展開しているのですか。多くの企業が柏木さんの研修プログラムを会社全体で取り入れています。また、柏木さんが「データを活用する価値」を認識したのはいつで、どんなきっかけがありましたか。

 今も、日本の多くの企業で、データが十分にはうまく使われていないと思っています。企業内のデータ量は増えました。しかし、「活用」という観点では、ほとんど有効に使われていないと感じております。

 私がデータ活用の価値を認識したのは、ビジネススクールに在籍していた2002年から2003年です。今も、その当時と状況は大きくは変わっていません。データは活用すべきだ、有効だと一般論ではだれもが理解しています。その一方で、企業のビジネスパーソンは、個人個人が必ずしもデータを使わなくても、多くの日々の仕事は粛々と回せてしまいます。そのような状況の中、あえて新たにデータを使い始めるインセンティブが個人レベルでは決して高くない環境が背景にあります。


Seminar Information●インプレスからセミナーのお知らせ
9/11(火)午後、柏木吉基氏を講師に迎えて「基礎データリテラシー講座」 <データから“結論”を引き出すスキル演習編> ~半日の演習でデータ分析活用に必要な考え方・センス・視点が身につく~」を開催します。詳細はこちらへ!
https://b-event.impress.co.jp/event/datariteracy20180911/

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