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[インタビュー]

先進ユーザーが皆、DevOpsやコンテナに取り組む理由─クリエーションライン安田忠弘社長

デジタルトランスフォーメーションは、市場生存をかけた強い危機感から

2019年1月22日(火)河原 潤(IT Leaders編集部)

業務システム/アプリケーションの開発において、先進的なオープンソースソフトウェア(OSS)の活用が当たり前になった。競争優位を生むITを獲得するために、OSSの活用スキルがユーザー企業にも問われるようにもなったが、素のOSSをそのまま使うのはやはり難度が高い。クリエーションラインはそんなユーザーへの支援を生業とするエンジニア集団である。代表取締役社長の安田忠弘氏に、OSS、それからDevOpsやコンテナといった昨今の開発トレンドについていろいろ尋ねてみた。

Chef、Docker、GitLab、Kubernetes……主要OSSを次々手がける

──クリエーションラインはどんな会社なのかを簡単に紹介してください。

 設立は2006年で、クラウド、OSS、DevOps、コンテナ、データ分析といった領域にフォーカスしてお客様の問題解決にあたるエンジニア集団です。2008年にOSSのクラウド管理基盤「Eucalyptus」(ユーカリプタス)を手がけた辺りが、今の業容の出発点と言えます。当初、お客様はSIerがほとんどでしたが、現在は事業会社がメインになっています。KDDIやデンソーをはじめ、大手・大規模企業のプロジェクトを多く支援させていただいています。

写真1:クリエーションライン 代表取締役社長の安田忠弘氏

──クラウドやOSS周りの開発で今外せない領域を手がけていますね。具体的には、どんな技術やツールを扱っているのでしょう。

 主だったところで言うと、2012年から「Chef」の国内向け展開を始めて、その後、「HashiCorp」「Docker」「GitLab」などの導入支援をしています(図1)。Chef、Docker、GitLabの3つに関しては、日本で唯一のオーソライズドパートナーとして、サブスクリプションの販売や公式トレーニング、導入コンサルティングを提供しています。

 注目を集めている「Kubernetes」(クーバネティス、クーベネティス)についても、KubernetesサービスプロバイダーとKubernetesトレーニングパートナーの認定を受けています。2つともというのは国内では当社だけですね。導入支援から、アーキテクトの育成支援、トレーニング、コンサルティングまでメニューを用意しています。

図1:取り扱うOSS製品の推移(出典:クリエーションライン)
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──なるほど。そうしたOSSを用いた事例にはどんなものがありますか。

 例えばChefですと、2018年6月にYahoo! JAPANのITインフラ事例を発表しました。同社は5万3000台の仮想サーバーを稼働させているのですが、Chefを使ってその運用管理の自動化を実現しています。グローバルで見ても大規模な事例になります。

 ほかに、独立行政法人 国立高等専門学校機構(高専)におけるセキュリティ演習環境の自動構築というユニークな事例もあります。先生が数回クリックするだけで演習環境が構築されて、そこで生徒がログインして演習を行い、終わればログアウトして廃棄するというものです。こちらは2018年のマイクロソフト ジャパン パートナー オブ ザ イヤーの「OSSアプリケーション&インフラストラクチャアワード」を受賞しました(図2)。

図2:高専におけるセキュリティ演習環境の自動構築(出典:クリエーションライン)
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クラウド活用の焦点は上のレイヤに

──企業のクラウド活用は、SaaSから始まり、PaaS、IaaSとプラットフォームや基盤にフォーカスが移っています。早い時期からクラウドに取り組んできた安田さんから見て、今の日本の企業におけるクラウドの浸透、活用度合いはいかがでしょう。

 テック企業での動きは速かったのですが、ここ1、2年でようやく、いわゆるエンタープライズの大企業がクラウドを本格的に利用し始めたと感じています。少し昔の話をしていいですか?

 クリエーションラインを立ち上げる以前、私はソフトバンクブロードメディアという会社にいました。ソフトバンクグループがYahoo! BBで国内のブロードバンド普及に一役買っていた頃ですね。

 当時、ブロードバンド時代と言いながらも、企業が自社のデータを外部に置いてオンラインでアクセスするといった話にはなりませんでした。でも、私自身は、将来はその方向に進むと確信していたので、独立してWebアプリケーションなどを作りながら、エンタープライズ向けのブロードバンド、今で言うクラウドビジネスに邁進しました。

 AWSが米国で始動したのが2006年で、日本で一部のマニアックなユーザーがそれを話題にし始めたのが2008年頃だったと記憶していますが、そんな時代です。この頃、Eucalyptusと出会いました。Amazon EC2と同様の機能をオンプレミスで動かすOSSです。Eucalyptusのマニュアル文書を作ってWebで公開しました。まったく儲からなかったのですが、マニアックな方々に注目いただいて(笑)、日本のEucalyptusコミュニティができていきました。ここで技術力が認められて、IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)のクラウド事業を受託することになります。

──それが多くの企業にクリエーションラインを知られるきっかけになった。

 そうです。IPAの公募事業で取り組んだのは、Eucalyptusだけでなく、「Zabbix」や「OpenAM」など、いろいろなOSSを組み合わせて、エンタープライズユーザーが使えるクラウド基盤を構築するというプロジェクトです。パフォーマンスやセキュリティで、エンタープライズレベルの利用にたえるのかを検証するという難度の高いもので、ここでの経験やさまざまなキーパーソンの方とつながりを持てたことが、今のビジネスに相当効いていると思います。

──クラウド基盤を起点に、OSSの活用という一貫した方針を持ちながら、さまざまなプロジェクトでスキルやノウハウを積み上げていったわけですね。

 扱うレイヤは上に向かっていますね。今ではCI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリ)やDevOpsのパイプラインをどう設計し回していくのか、データ分析まわりでのアルゴリズム実装などの相談に乗ってお手伝いしています。

 2018年2月には、お客様の1社であるデンソーと資本業務提携を結びました。デンソーがアジャイル開発やDevOpsを推進するにあたって、当社が「DevOpsコーチ」という形で参加したのがきっかけです。

 扱うレイヤが上に向かうこの流れは、国内エンタープライズユーザーのクラウド活用におけるフォーカスの移り変わりを示しています。今では多くのユーザーがクラウド基盤やプラットフォームを抽象化できるようなアプローチを求めています。そこで、PaaSやDevOps、コンテナ、サーバーレスなどに着目し、その下の基盤自体のことはあまり考えたくないという指向ですね。そんな方向性から、当社としても必然的にフォーカスポイントがどんどん上のレイヤに広がっているのです。

●次ページ:デジタル変革でDevOpsが必須になる理由、コンテナの価値

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