SMBC日興証券は2019年3月25日、株式銘柄が1カ月後に値上がりするかどうかをAIで予測し、買うべき銘柄を自動でアドバイスするサービス「AI株式ポートフォリオ診断」を発表した。オンラインで取引を行う「ダイレクトコース」の契約個客向けに、2019年3月29日から無料で提供する。契約者を増やすことと、株取引の活性化が狙い。過去のデータを用いた検証では、推薦銘柄上位10種を運用した場合、約8年間で資産が12.99倍に増えた。
AI株式ポートフォリオ診断は、顧客の株式ポートフォリオ(株式の構成、組み合わせ)をアドバイスする情報サービスである(図1)。PCやスマートフォンの画面から利用できる。サービスは、これから新規に株式を購入するユーザーでも、すでに株式を保有しているユーザーでも利用できる。
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株式を新規に購入する際には、購入する銘柄と投資金額、許容リスクのレベルを選択すると、組み合わせるべき相性の良い銘柄を提示してくれる。すでに株式を保有しているユーザー向けには、保有している銘柄を診断した上で、リバランス(入れ替え)の案を提案してくれる。
最大の特徴は、ディープラーニング(深層学習)を活用して個々の株式銘柄が値上がりするかどうかを予測し、これをアドバイスに利用することである。将棋のAIで事業を開始したHEROZの技術を採用している。
判定モデルは、企業の決算データ(売上高、営業利益、総資産など)と株価データ(始値、高値、安値、終値、出来高の日足時系列)を入力し、1カ月先の期待収益性をスコアとして出力する(図2)。こうして得られる銘柄ごとのスコアをアドバイスに利用する。判定モデルは、年に数回更新する。
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過去のデータを用いたシミュレーションも実施した(図3)。2010年12月1日時点の資産を1とすると、2019年2月1日時点で、AIが推奨する上位10社を運用した場合に12.99倍に資産が増えている計算になる。上位100社では、9.83倍になる。これに対して、全額日経平均に投資した場合の資産は2.09倍である。
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背景について、SMBC日興証券で常務執行役員を務める坂本昌史氏(写真1)は、「(株式を保有しているものの)売買のタイミングが分からずに塩漬けになっている資産がある」という状況を指摘する。
同社の分析によると、2017年の1年間取引を行っていないユーザー約20万件のうち、85%は5銘柄以下の株式しか持っていない。また、銘柄を多く持てば持つほど、利益が出ている。株式を保有していても、何をすればいいか分からないユーザーが多いという。
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