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NEC、「高速カメラ物体認識技術」を開発、高速に流れる製造ラインをリアルタイムに検品可能に

2019年3月28日(木)日川 佳三(IT Leaders編集部)

NECは2019年3月28日、画像認識の高速化によって製造ラインの全品検査を可能にする「高速カメラ物体認識技術」を開発したと発表した。製造ライン上を高速に移動するビンや缶のラベルなどの外観検査、錠剤や食品の異物検知などに適用できる。同技術は、東京大学大学院情報理工学系研究科石川正俊教授室・妹尾拓講師らの研究グループと共同で開発した。

 NECの「高速カメラ物体認識技術」は、高速に画像を認識する技術である。高速カメラで撮影した毎秒1000フレームの大量の画像から認識に適した画像を瞬時に選別し、高速かつ高精度に検査の合否を判別する。実験では、カメラの前を0.03秒で通過・移動する物体について、刻印された5ミリメートル程度の微細な文字の違いをリアルタイムで、95%以上の精度で判別できることを確認した(図1)。

図1:高速カメラ物体認識技術の概要(出典:NEC)図1:高速カメラ物体認識技術の概要(出典:NEC)

 開発の背景について同社は、高速で動く製造ラインにおいては、画像解析による検品作業が難しいことを挙げている。「高速カメラを使えば製造ラインの速度を下げなくても検査できるが、この一方で、高速カメラを使うと処理しなければならない画像の数が増えて画像処理に時間がかかり、リアルタイムな検査が難しくなる」(同社)。

 今回開発した高速カメラ物体認識技術の特徴は2つある。1つは、大量の画像から物体認識に適した画像を瞬時に選別する技術である。もう1つは、同一の物体を撮影した複数の画像を用いることで高速に画像を認識できるようにしたことである。

 最大の特徴は、大量の画像から、物体認識に適した画像を瞬時に選別する技術である。同技術では、高速カメラの追跡処理で計算する物体の移動量などの情報と、画像の鮮明さなど認識に有効な画像との間には高い相関があることに着目した。物体の移動量や、画像の鮮明さを表す輝度値から、それぞれの画像が認識に有効か否かを瞬時に判定・選別する。

 これにより、高速カメラで撮影した毎秒1000フレームもの対象物体の大量画像から、キズや刻印の有無が鮮明に撮影されているなど認識に適した画像のみを選別する。処理を行う画像数やその解析時間を数十分の1に削減する。

 もう1つの特徴として、同一物体を撮影した複数の画像を用いることで、画像を高速に認識可能にした点がある。高速カメラを用いた場合、同一の対象物体に対して、少しずつ見え方が異なる複数枚の画像を取得し、対象物体の情報量を増やして解析することができる。これを利用する。

 得られる画像それぞれに対して、小規模なニューラルネットワークを用いて軽量化した認識を繰り返す。この認識結果を突き合わせ、最も多い結果を正解とする多数決方式を採用した。これにより、従来のように1枚の画像のみで認識する場合に比べて、約4割短縮した0.01秒程度で高速に処理ができる。高速で動く物体をリアルタイムに認識できるようになる。

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