ドイツ IT・通信・ニューメディア産業連合会(Bitkom)が先ごろ(2019年4月)、従業員が20人以上のドイツ企業606社に対して、デジタル化について電話アンケートを行った。それによると多くの企業は、デジタル化はドイツ企業にとってはチャンスであると同時に、国際競争力向上には必要と答えたものの、実際に投資している企業は少ないことが分かった。つまり、デジタル化の重要性に対する認識と実際の取り組みの間には大きなギャップが存在しているのだ。
ドイツは日本と並んで製造業が強い国である。Industrie 4.0 によって製造業のみならず産業全般のデジタル化が進んでいるように見えるが、実際のところはどうであろうか?ドイツ IT・通信・ニューメディア産業連合会(Bitkom)の最近の調査から、デジタル化に対して実際にドイツの企業がどのように取り組んでいるのかが垣間見える。その調査内容を紹介しよう。
デジタル化への取り組み姿勢
インターネットの進展によって競争が激化した、と多くのドイツ企業は認めている。その実態を、去年のアンケートと今年のアンケートを比較して数字で示すと図1のようになる。
質問 | 2019年 | 2018年 | 増加分 |
---|---|---|---|
インターネットによって競争が激化したか? | 65% | 57% | +8 |
他業種からの参入が直接の競合となったか? | 60% | 53% | +7 |
同業者の中で先にデジタル化した会社が有利か? | 42% | 37% | +5 |
製品はデジタル対応になっているか? | 72% | 63% | +9 |
デジタル化した新製品や新サービスを提供したか? | 53% | 48% | +5 |
デジタル化された新製品や新サービスを購入したか? | 45% | 37% | +8 |
この結果に対してBitkom 社長のアーヒム・ベルク氏(以下、ベルク氏)は、「デジタル化は競争を激化させるが、それがイノベーションを生む」と見解を述べた。
デジタル化への実際の取り組み
デジタル化の先端技術を使った新しいビジネスモデルが次々と発表されている。そのような動きに対する関心の度合いを質問した(図2)。
質問 | Yesの回答率 |
---|---|
デジタル化の責任者(CDO = Chief Digital Officer)を決めているか? | 15% |
デジタル化の傾向に全く無関心か? | 26% |
デジタル化に対して社の方針は定めているか? | 33% |
今年度中に、デジタル化の新しいビジネスモデルの開発に投資するか? | 22% |
過去に、デジタル化の新しいビジネスモデルの開発に投資したことがあるか? | 54% |
過去に、一度もデジタル化の新しいビジネスモデルの開発に投資したことがない | 21% |
次に、デジタル化によるビジネスチャンスについて質問したところ次のような回答があった(図3)。
質問 | 2019年 | 2018年 | 増加分 |
---|---|---|---|
デジタル化は貴社にとってビジネスチャンスか? | 91% | ||
デジタル化は貴社にとって不安材料(リスク)か? | 7% | ||
デジタル化は貴社の存在を脅かすか? | 12% | 24% | -12 |
貴社はデジタル化への対応は済んでいるか? | 37% | 33% | +4 |
この回答から分かるように、「訳もわからず無暗とデジタル化を恐れるという企業は少なくなってきた。デジタル化とは何かをしっかりと理解すべきで、放っておいてはデジタル化が進まないことも理解するようになった」とベルク氏は述べている。
●Next:ドイツ企業がデジタル化に重要と考えている技術とは?
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