大阪大学とNECは2019年11月15日、大阪大学のスーパーコンピュータ「OCTOPUS」を強化し、計算需要が急激に増加した場合にパブリッククラウド「Microsoft Azure」にオフロードする技術(クラウドバースティング)を実装したと発表した。2019年内にOCTOPUSの利用者を対象に実証実験を行う。
大坂大学は、2017年12月からスーパーコンピュータのOCTOPUSを運用している。国内の研究者らが科学計算やデータ分析に使っている。ところが、年々研究者からの需要が増大しており、研究者がスーパーコンピュータを使えるまでの待ち時間が長くなってきており、研究に支障をきたしつつあった。
これに対して、IaaS型クラウドサービスを利用した解決法が望まれていたが、スーパーコンピュータと民間のクラウドサービスの同時利用は、利用者の管理や計算の管理などに相違があったため、運用的な視点で困難だった。
大阪大学とNECは今回、ジョブケジューラやクラウドサービス制御機能を新たに開発した。これにより、大幅なシステム変更・開発を必要とせずに、OCTOPUSとAzureを連携させたクラウドバースティング環境を実現した。OCTOPUSの負荷を、Azure上に構築した計算機資源に容易にオフロードできるようにした(図1)。
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2019年内に、OCTOPUSの利用者である研究者を対象に実証実験を実施する。今回構築したOCTOPUS-Azureクラウドバースティング環境での検証を通じて、将来の本格運用に向けた技術課題の抽出を行う。さらに、医療データなどの取り扱いを想定し、オンプレミス環境とパブリッククラウド環境間でのセキュアなデータ共有についても検証する。
なお、Microsoft Azureは、InfiniBandやGPUを搭載した仮想マシンを提供している。オンデマンドで必要な時に起動し、不要な場合は停止するHPC環境を構築できる。これらのことから、HPC分野における大型計算機のオフロード用途に適している。
この一方で、利用者がオンプレミスとクラウドを意識させることなく透過的に利用させるには、HPC環境をハイブリッドクラウド型のシステムとして構成し、利用者からの計算ニーズに対して、システム側でオンプレミスとクラウドを自動的に使い分ける仕組みを実装する必要がある。