IDC Japanは2019年12月12日、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展やサイバーセキュリティの進化など、国内IT市場において2020年に起こる主要なイベントを10項目にまとめて発表した。同日の説明会では特に、DXの進展についてデータを挙げて報告した。国内企業がDXから得ている効果は、いまだにコスト削減や生産性向上であり、世界の企業と比べると遅れているという。
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IDC Japanの説明会では、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展に焦点をあて、世界名目GDPの内訳の推移を示した。DXに取り組む企業と、それ以外の企業によるGDPの内訳である。ここから見える結論として、IDC Japanでリサーチバイスプレジデントを務める寄藤幸治氏(写真1)は、「デジタル優位は近い」と指摘する。
具体的には、2018年時点のGDPの内訳は、DX企業が13兆5000億米ドルで、それ以外の企業が67兆7000億米ドルである。DX企業が占める割合は小さい。ところが、2023年には、DX企業が53兆3000億米ドル、それ以外の企業が49兆1000億米ドルとなる。DX企業が過半数を占めるようになる。
寄藤氏は、DX企業を特徴付ける性質を3つ挙げる。「Hyperspeed」(超高速)、「Hyperscale」(超大規模)、「Hyper-connected」(超多接続)である。例えば、超高速では、今日の100倍速いスピードでサービスを作る。超大規模では、過去40年間と同じ数のサービスを今後4年間で開発し、数十億のエッジデバイス上で稼働させる。
この一方で、国内企業がDXへの取り組みによって得た効果については、「コスト効率性」(27.3%)と「生産性の改善」(25.3%)がトップ2である(図1)。この調査結果を受けて寄藤氏は、「現時点でDXの効果がコスト削減と生産性向上というのは、決して間違ってはいない。しかし、世界のDX企業は顧客と早くエンゲージして新しい製品・サービスを生み出している」と指摘する。
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説明会では、DXの進展を含めた、2020年に起こる国内IT市場のイベント10項目を発表した(表1)。
1 | DXの進展 | 2020年のIT市場は、前年比1.3%減となるが、DXに向けた支出は確実に増加する |
2 | Future of work | DXで全体最適の実現を目指す企業が増加するとともに、Future of workの重要性が増大する |
3 | クラウドの変化 | 2020年の国内クラウド市場は高い成長を継続するが、カオス期を迎える |
4 | 安心なデータ共有 | 社外とのデータ共有を行うためのテクノロジの技術進化が安心感の醸成に寄与し、サプライチェーンなどの分野で適用事例が広がり始める |
5 | インテリジェントビジネスプロセス | 約半数の企業がビジネスプロセスにインテリジェントな自動化を組み込み、AIベースのソフトウェアを使用して、運用および顧客/従業員エクスペリエンスを実現する |
6 | サイバーセキュリティの進化 | 東京オリンピック/パラリンピックでデジタル化が進み、サイバー攻撃による被害は甚大化し、リスクベースアプローチによるサイバーセキュリティ対策の重要性が認識される |
7 | エッジにおける競争 | エンタープライズインフラに対する「データ基盤」としての要求が高まる中で、エッジでの競合が本格化する |
8 | サービスビジネスモデル変革 | これまでプロダクトベンダーで先行してきた「as a Service」ビジネスへの取り組みが、サービスベンダーにおいても本格化する |
9 | IT人材獲得競争 | アジャイル開発とクラウドネイティブアプローチによるレガシーシステムのモダナイゼーションが加速し、DX向けハイスキル人材の獲得競争が激化する |
10 | 立ち上がる5G | 5Gサービスが始まる。2020年時点では5Gの利用は限定的だが、アプリケーション分野で、5Gの利用拡大に向けた布石が打たれる |