矢野経済研究所は2019年12月24日、国内のBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)市場を調査し、サービス別の動向や参入企業動向、将来展望について発表した。2018年度のIT系BPO市場規模は、前年度比3.9%増の2兆4762億円、非IT系BPO市場規模は同1.9%増の1兆7348億7000万円となった。労働力不足・人材不足に加え、働き方改革推進の影響を背景にアウトソーシングサービスへの需要が拡大しているとし、2019年度以降もIT系・非IT系ともに市場拡大を予測している。
国内のBPO市場は、IT系BPOと非IT系BPOに大別される。2018年度のIT系BPO市場規模(事業者売上高ベース)は前年度比3.9%増の2兆4762億円、非IT系BPO市場規模(同)は前年度比1.9%増の1兆7348億7000万円だった(図1)。
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IT系BPO市場の拡大は、クラウドサービスの普及によるクラウドサービス提供事業者のデータセンターの利用拡大や、企業の扱うデータ量の増大によるデータセンター利用企業の増加が要因となっている。加えて、災害時などの事業継続対策(BCP)の必要性が再認識されており、堅牢なデータセンターサービスが重要視されていることも一因だという。
非IT系BPO市場は、昨今の労働力不足や人材不足に加え、働き方改革推進の影響によって、多くの企業で自社の人的資源の生産性向上や業務効率化を目的に、非中核業務を外部委託(アウトソーシング)するといったBPOサービス需要が高まっており、拡大基調となっている。また、民間企業以外にも、官公庁からのアウトソーシング需要も高まっていることも当該市場にプラスとなっている。労働契約法や労働者派遣法の改正の影響により、人材派遣サービス(派遣スタッフ)の利用からBPOサービスに切り替える企業が増えていることも市場拡大を後押ししている。
BPO事業者のなかには、RPA(ロボットによる業務自動化の取り組み)やAIなどのデジタル技術を活用することで、BPO業務の効率化・迅速化・省力化を図っている事業者もいる。これにより、請け負う業務領域を拡大し、利用企業からの受注量が増加して、プラス効果が期待されるという。
2018年度の人事BPO市場規模(事業者売上高ベース)は、前年度比1.9%増の828億4000万円だった。
働き方改革の推進にともなう非中核業務の外部委託の進行によって、人事部門の業務に対しても外部への業務委託を検討する企業は増加している。また、労働契約法や労働者派遣法の改正の影響により、人材派遣サービス(派遣スタッフ)の活用からBPOサービスへの切り替えが進み、人事業務の外部委託需要は拡大傾向にある。
この一方、人事関連業務の外部委託に対する抵抗感はいまだ強く、その進行は部分的・段階的になるものと見られる。このことから、市場は緩やかに推移し、2023年度の人事BPO市場規模は906億円となると、矢野経済研究所は予測している。
将来展望としては、2023年度のIT系BPO市場規模(事業者売上高ベース)は2兆8076億8000万円、非IT系BPO市場規模(同)は1兆8730億6000万円と、いずれも拡大すると予測している。
IT系BPO市場は、今後もクラウドサービスの普及によるクラウドサービス提供事業者におけるデータセンターの利用拡大や、企業の扱うデータ量の増大によるデータセンター利用企業の増加が見込まれることから、拡大基調を予測している。
非IT系BPO市場は、人材不足や働き方改革の推進、人材派遣サービスからの切替需要などを背景に、当該BPOサービスに対する需要はより一層高まっていくものと見られることから、堅調な成長が続くと見込んでいる。