JTBは、データ活用を推進する組織「データサイエンスセントラル」を運営している。顧客データを質的に分類し、個々の顧客のセグメントにあった施策を実行している。2020年3月5日、JDMC主催の「データマネジメント2020」のセッションに登壇したJTB Web販売部 データサイエンスセントラル 戦略担当部長 データサイエンスセントラル 統括の福田晃仁氏が取り組みを解説した。
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JTBのWeb販売部における最重要ミッションは、データドリブン(データ分析による施策)を実践することである。
これを実現するための戦略組織「データサイエンスセントラル」を統括する福田晃仁氏(写真1)は、JTBの顧客データ管理基盤の変遷と、JTBの顧客分析方法を解説した。
データサイエンスセントラルは、顧客データ基盤、顧客分析、マーケティング施策の3つのチームで成り立つ。特徴は、マーケティング施策から逆算して、組織とシステムを設計したこと。マーケティング施策に必要な知見は何か、その知見を得るために必要な顧客データは何か、という着眼点に立っている。これにより、顧客分析とマーケティング施策が上手くいっている。
旅行データには特性がある、と福田氏は指摘する。旅行の購買スパンは年に数回であり、一般消費財よりも長いが自動車よりは短い。また、完全離脱や休眠がない、あるいは判定しにくく、顧客が数年ぶりに帰ってくるといったことが普通にある。また、購入(予約)で終わりではなく、取り消しや出発というステータスがある。移動手段や宿泊施設など、データの連携先も多い。
プライベートDMP、探索型BI、統計解析などを活用
福田氏はまず、顧客データを分析するために構築したデータ基盤の構成を紹介した。データソースは大きく、販売データ、外部データ、Webログデータの3つ。これらをつないで1つのIDとしてプライベートDMP(データ管理基盤)に貯めて管理する。
最初のフェーズでは、トレジャーデータ(Treasure Data)が提供するプライベートDMPサービス「TREASURE CDP」に貯めたデータを、クリックテック・ジャパンのデータ探索型BIソフトウェア「QlikView」で分析できるようにした。このために必要な最小限の基盤を構築した。
その後、内部データの精緻化やデータクレンジングによって、目的別のデータマートを構築した。現在では、統計解析用にマシンラーニング(機械学習)を自動化するソフトウェア「DataRobot」なども導入。マーケティング自動化(MA)などの施策を実行するためのクラウドサービス「Salesforce Marketing Cloud」も利用している。
データソースも増やし、店舗データ/コールセンターデータやエンドユーザー系のデータなどの分析も開始した。
顧客をコンテクストで分類する
顧客データ基盤(CDP)に蓄積したデータを分析するチームは、量的分析(統計解析)を担当するチームと、質的分析(探索型分析)を担当するチームに分かれる。
量的分析チームのアウトプットは、コンバージョンレートの改善などである。このために統計解析のアルゴリズムを構築する。
一方、質的分析チームのアウトプットは、「どのような顧客に、どのようなコミュニケーションを取るべきか」を示すことである。
質的分類で重要なポイントは、「セグメントを何で切るか」である。福田氏は「顧客のコンテクストで分類する」と説明する。顧客をコンテクストで分類することで、顧客の構造を明らかにできる。
●Next:「出張女子」「60代は気温に敏感」、顧客の“文脈セグメント”の実例
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