個別管理されている社内システムのデータを集約すれば、より高度なデータ活用が期待できる。だが、そこで課題となるのが、「社内のどこに、どんなデータが存在するかわからない」という現実だ。Metafindコンサルティングでシニアコンサルタントを務める髙橋章氏に、その克服に向けたメタデータによるデータの見える化の意義や推進に向けたポイントを、具体例を交えつつ解説してもらった。
DBのブラックボックス化が社内データ活用の“壁”に
企業間競争に勝ち抜き、次なる成長軌道につなげるべく、「新たな社内データ活用」への関心が企業の間で急速に盛り上がっている。従来からの取り組みとの一番の違いは、分散していた社内データを集約し、ビッグデータとして扱うことだ。これにより、データの“量”だけでなく“要素”も豊富に揃えられ、より大きな成果を見込めるようになる。
だが、その実践に向けては、とある課題が“壁”となっている。かねてから指摘されてきた「どんなデータがどこにあるか分からない」ことだ。理由について多くを語るまでもないだろう。社内にはすでに数々のシステムが存在し、それらのDBは個々に最適化されるかたちで設計されている。そのため、ユーザー部門以外がデータだけを見ても、その属性や意味を理解するのは困難だ。
Metafindコンサルティングでシニアコンサルタントを務める髙橋章氏は、「IT担当者の定年などにより、現段階でDBの中身がブラックボックス化しているケースはかなりの割合になります。また、開発や改修のスピードを優先するあまり、データ定義書で項目をきちんと意味定義せぬまま開発してしまうケースも増え、状況は悪化する一方です」と現状を説明する。
データの場所や意味が分からなければ、アナリストやサイエンティストでも活用のしようがない。それらの調査に少なからぬ時間を要すこともデータ活用の足かせとなる。また、データへの各種問い合わせに対応するIT部門にとっても、関連作業が発生する点でこの問題は厄介だ。
メタデータでデータの意味を抜本的に見える化
対応に向け髙橋氏が必要性を訴えるのが、社内のデータを網羅した「メタデータの見える化」だ。メタデータとは、データが利用されているシステムや管理先のテーブル名、データの用途、意味などの「データについてのデータ」のことである。たとえばデータ定義書に記載されたデータ項目の論理名や物理名、コードや区分値、それらの意味といったメタデータをリポジトリ(メタデータを管理するDB)に登録し公開することにより、社内の誰もが必要とするデータの管理先や中身を把握できることを目指すのだ。
「データ分析に費やす時間の8割は、データの調査や準備に費やされています。リポジトリを使用して欲しいデータを探したり、データの意味を直ぐに把握したりすることができれば、分析自体により多くの時間を割けるようにもなります」(高橋氏)。
一方で、メタデータによるデータの見える化はデータ活用という“攻め”のみならず、コンプライアンス対応などの“守り”にも力を発揮する。
個人情報への関心がグローバルで高まる中、その管理厳格化の動きもまたグローバルで広がっている。EUでは2018年に施工されたGDPR(一般データ保護規則)により、「個人情報がどこに存在しているかを明らかにすること」「個人情報の削除や移転に応じること」など、より厳格な管理が企業に義務付けられた。日本でも2020年の個人情報保護法改正により、より厳格な方向性で見直しが行われる見通しだ。
「日本では多くの企業で個人情報が社内に散在し、把握に向けた動きも盛り上がっていません。しかし、個人情報がどこにあるのかをリポジトリで管理することで、一括して素早く見つけることが可能となり、コンプライアンス・リスクを抜本的に低減できるのです」(髙橋氏)。
現場視点でデータを翻訳するデータアナリスト
各システムでのデータの重複などもメタデータを見える化することにより容易に発見できるようになる。それを基に、システムのスリム化を図るなど、システム開発/保守にも活用を見込めるほか、データに関するナレッジ継承にも大いに役立つ。
このように、データカタログは企業に広範なメリットをもたらすが、その活用にあたってはポイントがいくつか存在する。髙橋氏がまず挙げるのが、「小規模から始めること」だ。
「メタデータによる管理は、やろうと思えばいくらでも細かく行えます。しかし、それでは時間と予算がいくらあっても足りません。まずは明確な目的の下、現場からの問い合わせが多く、費用対効果の高いデータから管理に取り組むべき。そこでの成果を横展開していくことが現実的なアプローチとなります」(髙橋氏)。
最初に整理に着手すべきデータとしては、マスタデータのキーとなるコードや、区分値である。後は、テーブルが管理するデータ項目の中で、5W1Hを表す必要最低限のものから始めるとよい。。
また、「社内の協力体制を構築すること」も大切だ。データの意味を表すメタデータの整備には、日々の業務でデータを入力したり利用したりしている現場の協力が欠かせない。そのための具体的な施策が、データ資産の管理責任者である「データスチュワード」の配置だ。
「例えば、同じ受注金額であっても、内税か外税か、円なのか現地通貨なのか、を理解しておかなければ、分析の際に正確な結果を出すことができません。そのため、そのような意味を知っている方をデータ資産の管理者として抜擢するわけです」。
社内の前向きな協力を得るには、データスチュワード職の価値を保証する社内的な仕組みづくりも合わせて求められるという。
データ再利用に向けデータ戦略の策定を!
Metafindコンサルティングは、データマネジメントやデータガバナンスのコンサルティングを専門に手掛ける国内でも数少ない1社だ。メタデータマネジメントに関する座学教育を行う「オンサイト教育」、本格着手前の「ワークショップ」、独自フレームワークにより企画書などを定義する「企画立案/要件定義」、同社の知見を基に、現状のリポジトリ管理の問題点をレポートする「評価レポート」など、同社のメタデータマネジメントサービスはすでに多くの引き合いを集めており、いくつもの成果を上げている。
そこでの経験を踏まえ、高橋氏はデータ管理の重要性をこう強調する。「ビッグデータ活用に向け、企業によるPoCが活発化しています。そこで残念なのは、PoCが失敗した場合、利用されたデータが社内に埋もれてしまいがちなことです。この貴重な資産を無駄にしないためにも、データ管理の基本的な考え方となるデータ戦略の策定にぜひ取り組んでほしい。これにより、データの再利用が促進され、活用のさらなる高度化の道も開けるはずなのです」。
データに豊富な知見を備えたMetafindコンサルティングは、メタデータによるデータの見える化にとどまらずデータ戦略の策定も総合的に支援する。
●お問い合わせ先
Metafindコンサルティング株式会社
URL: https://metafind.jp/
TEL::03-4578-5961
- サイロ化された業務体系が阻害要因に~DX時代の競争優位を導くMDMの成功要因とは?(2021/01/25)
- データの価値を最大化する戦略アプローチと、データドリブン文化の醸成に向けて(2020/05/27)
- アジャイルなデータ統合・活用を実現するデータ仮想化技術の最前線(2020/04/17)
- 真のデータ駆動型の組織を実現する持続可能なデータ統合のフレームワークとは(2020/04/15)
- プラットフォームビジネス事業者が推進する「デジタル革命」~日本企業が考えていなかった、グローバルでは当り前のデータ活用とは?(2020/04/14)