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[データマネジメント2020]

プラットフォームビジネス事業者が推進する「デジタル革命」~日本企業が考えていなかった、グローバルでは当り前のデータ活用とは?

2020年4月14日(火)

CDO Clubは、CDO(Chief Digital Officer:最高デジタル責任者/Chief Data Officer:最高データ責任者)といった企業のデジタル戦略の統括を担う責任者のコミュニティであり、世界各国から5000人以上のデジタルリーダーが参加している。「データマネジメント2020」のセッションでは、CDO Club Japanの事務局マネージャーを務めるSansanの柿崎充氏が登壇、米国や東京で開催された「CDO Summit」に CDO Club日本代表講演者として参加した経験・体験をもとに、海外プラットフォーム企業の最新のデジタル活用やデータ戦略の動向と、今後、日本企業が進むべき道筋について解説した。

デジタル変革の本質は生産性向上ではなく、プラットフォーム革命にあり

 いまや、デジタルトランスフォーメーションの波はあらゆる業種業界に波及している。少子高齢化による労働力不足等を背景に日本企業のGDPが低下している中、「生産性向上のためにはデジタルトランスフォーメーションが不可欠」といった論調も高まる一方だ。

 「しかし、生産性には働き方改革などで実現される『労働生産性』と、ガバナンス改革によって成し遂げられる『資本生産性』がある。赤字事業を抱えていたり、不祥事を発生させたりした状態で労働生産性を向上しても意味はない。そうしたことから、資本生産性の向上の方が重要であり、実際に働き方改革で成果を上げている企業は、それ以前にガバナンス改革を成功させている。そしてこれらの2つを包含しているのが、デジタル改革だ」と、登壇した柿崎氏は訴える。

Sansan株式会社 デジタル戦略統括室 室長
一般社団法人 CDO Club Japan 事務局マネージャー
柿崎 充 氏

 そうしたデジタル改革で成功を収めた企業の1社がUberであり、上場時の時価総額は約7兆円に到達した。これは日本企業であれば10位以内にランクインする額となる。だが、調査会社の報告によれば、Uberで利用されるアプリの開発期間は4か月程度で、開発に要したコストは約3万8000ドルにすぎないという。

 「時価総額7兆円のアプリがこの程度の期間と金額で作れる時代を迎えている。多大なコストと時間をかけることなく、付加価値の高いサービスを実現できる理由には“自前主義”からの脱却が挙げられる。例えば、ソーシャル投資サイトの『Instavest』は、顧客に対峙するサービスの部分だけを自社開発し、他の部分は外部サービスやシステムとAPI連携させている。そうしたことから、今後、サービスを低コスト、短期間で立ち上げていくためには、様々なサービスを“マッシュアップ”していくことが重要になる」(柿崎氏)。

 また、柿崎氏は「デジタル変革の本質は生産性向上ではない。その本質はプラットフォーム革命にある」と強調する。従来、プラットフォームビジネスは生産者と消費者をマッチングさせるビジネス形態と言われてきた。しかし、「もともとプラットフォームビジネスは、『異なる複数の市場を攻略していく』ということが原点にあった」と柿崎氏は語る。

 「例えばGoogleは検索サービスを提供しているが、それはボランティアではなく、収集したデータを活用した広告で収益を上げている。デジタルディスラプターと呼ばれる企業の多くは、単にビジネスをデジタル化したのではなく、そうしたプラットフォームビジネスの戦略を採用している」(柿崎氏)。

デジタル企業が推進するプラットフォームビジネス戦略

 続いて柿崎氏は、デジタル変革を推進するための重要な施策の1つとなる「データ活用」についても、Amazon Goの事例を基に言及した。

 無人レジの活用で注目を集めるAmazon Goであるが、その真のポイントは、購入者の様々なデータの取得にある。具体的には、カメラとセンサーが、「嬉しそうに購入した」「嫌そうな顔をして購入した」「嬉しそうな顔を見せていたが、商品を棚に戻した」といった購入者の動作から表情の変化まですべてデータとして収集し、マーケティングに活用しているのだ。

 「その活用例の1つが、商品の値決めである。Amazonは競争力確保に向けて低価格戦略を推進しているが、一人ひとりの表情を分析したデータに基づいて、個々人に対して最適な価格設定を、しかも自動的に行いたいと考えている。さらにその結果に基づき、ネット上のショッピングモール、百貨店、小売店などで個別に戦略を実施するといった、プラットフォームビジネスを目指している」(柿崎氏)。

 また、デジタル化の推進に伴って商品やサービスのコストが下がり、生活レベルが向上したと言われている。調査会社の報告によれば、そうした満足度向上の一因として、検索や天気予報、地図情報、ファイル共有など、インターネット上で提供される各種無料サービスの普及があるという。

 これらのネットサービスは、無料または安価な価格設定で消費者の満足度を高めるサービスを提供する一方、異なったサービスで高い収益を上げることを可能としている。例えば、消費者が「100円の飲料水だが、120円で買っても良い」と思った場合、この「余分に支払っても良い」と考えた金額から、実際の価格を差し引いた金額の20円を「消費者余剰」と呼ぶ。

 「この消費者余剰は、消費者が“得をした”と感じる部分となるが、先に述べたネットサービスの浸透によって、この消費者余剰がどんどん上がっている。例えばGoogleならば、無料の検索サービスで消費者余剰を上昇させ市場の普及を促している。しかし、その一方で広告にはプレミア価格を設定し、生産者側の余剰金額を増やすことで収益を上げている。このように、Googleは複数の市場を攻略するプラットフォームビジネス戦略を推進している」(柿崎氏)。

エコシステムによる共創の時代へ、異なる業種業態の企業同士の連携が進む

 「このプラットフォームビジネス戦略を推進していくにあたり、まずは自社が時流に気付けるかどうか、そして乗っていけるかどうかが今後の成長の成否の境目になる。この戦略に最初に気付き成長を遂げた最初の企業がインテルだった」と柿崎氏は強調する。

 「インテルモデル」と呼ばれるプラットフォーム戦略推進の気付きとなったのは、「垂直統合型のシステムの崩壊」と、「水平分業型の業界構造の到来」だ。かつて、PCはCPUからハードウェア、OS、アプリケーション、販売、流通まで各ベンダーが一貫して行ってきた。だが、それらの各工程における分業化が進んでいることに気付いたインテルは、プラットフォームビジネス戦略に移行する。

プラットフォーム型ビジネスモデル

 こうした事例は、今やPC業界だけに限った話ではない。企業の枠を超えた産業構造へと変化していく時代においては、異なる業種業態の企業どうしの連携による「オープンイノベーション」の推進がますます求められるようになっていく。

 「そして今後、プラットフォームビジネスからエコシステムへ、競争から共創へと移行し、すべての企業がパートナーになる。そして、共創を推進していくにあたっては、一度、自社が属する業界の構造やパートナー企業の状況を書き出してみることが重要だ」と柿崎氏は語る。

 最後に柿崎氏は、「デジタル化の新しい世界に飛び込んでいくためには、CTOを外部から招聘したり、パラダイムシフトに気付けるような若手社員や、ある分野に入って日が浅い人を積極的に活用したりすることも重要となるだろう。加えて、自分自身の意識も変化させていかなければならない。そのためにも、自分と同じようなタイプの仲間と付き合うだけではなく、従来とは異なるタイプの人々とのつながりを広げていくことが不可欠だ」と述べて、セッションを締めくくった。


●お問い合わせ先

Sansan株式会社
URL: https://jp.corp-sansan.com/inquiry/

CDO Club Japan
URL: https://cdoclub.jp/

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