[海外動向]

新型コロナウイルスの情報追跡に役立つオープンソースプロジェクト群―GitHubが紹介

2020年4月2日(木)日川 佳三(IT Leaders編集部)

米GitHubの日本支社、ギットハブ・ジャパンが、2020年4月2日付けのブログで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する情報の追跡、理解、対策を目的とした主要オープンソースプロジェクトを紹介している。例えば、データ連携によってパンデミックの状況を追跡できるようにしたダッシュボードなどがある。

 ギットハブ・ジャパン(GitHub Japan)が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する情報の追跡、理解、対策を目的とする影響力の大きいオープンソースプロジェクトをブログで紹介している。動向を俯瞰しやすい、網羅的な内容であり、以下、ポイントをピックアップしてお伝えしよう。

 GitHubによると、COVID-19関連のプロジェクトと貢献者の数が急増している。過去2カ月間のオープンソースプロジェクトだけでも、6000人以上のコントリビュータが3000以上のCOVID-19対応プロジェクトを支援している。14万人以上のユニークユーザーが200万回以上、これらのプロジェクトを閲覧しているという。

 最近追加されたCOVID-19プロジェクトの例として、米ニューヨーク・タイムズ紙が、米国の州および国全体の情報源から生成したCOVID-19データセットを公開した。また、オンタリオ州は、COVID-19自己評価ツールソースを公開し、他の人が簡単に使用できるようにしている。

オープンデータとダッシュボードでパンデミックの状況を追跡

 パンデミック(感染症の世界的な流行)の状況を追跡するためにデータを連携させるプロジェクトとして、データセットを作成して公開し、データセットを対話型で可視化するダッシュボードがさまざま公開されている。

 COVID-19について最も引用されているものの1つが、米ジョンズ・ホプキンズ大学(Johns Hopkins University)が提供するデータセットである。世界中の疫学者、ジャーナリスト、統計学者が、このデータセットをCOVID-19の感染拡大に関する正規データソースの1つとして扱っている。

 このデータセットは、COVID-19感染報告をリアルタイムに追跡するインタラクティブダッシュボード画面1)でも使っている。オランダの医学誌ランセット(The Lancet)の記事によると、このダッシュボードは、「研究者、公衆衛生機関、一般市民向けに、感染症の拡大状況の追跡を可能とし、だれもが使えるツールの提供を目的」として、ジョンズ・ホプキンズ大学のシステムサイエンス・エンジニアリングセンター(Center for Systems Science and Engineering;CSSE)が開発した。

画面1:ジョンズ・ホプキンズ大学が開発した、COVID-19感染報告をリアルタイムに追跡する対話型ダッシュボードの画面画面1:ジョンズ・ホプキンズ大学が開発した、COVID-19感染報告をリアルタイムに追跡する対話型ダッシュボードの画面
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 各種の情報源(主に、中国の医師・医療従事者向けコミュニティのDXY)から集めたデータを、WHO(世界保健機関)をはじめとする他のソースの情報と照合することで検証している。各国の初感染例に関する情報は、通常、WHOよりも早くこのダッシュボードに伝えられる。ジョンズ・ホプキンズ大学のチームは、適切な対処方法という重要な情報をウイルス感染拡大の早い段階で提供できる点において、このダッシュボードは非常に有効であるとしている。

 米ワシントン大学の保健指標評価研究所(IHME)が提供するnCoV2019も、一般公開されている高品質データセットの1つで、ダッシュボード画面2)で閲覧できる。このデータセットには、感染症状の発現日や確認日など、各患者の詳細なデータが含まれている。COVID-19の再生産数や潜伏期間など、重要な統計データを導くために利用されているという。

画面2:ワシントン大学の保健指標評価研究所が提供するデータセット「nCoV2019」を可視化する対話型ダッシュボード画面画面2:ワシントン大学の保健指標評価研究所が提供するデータセット「nCoV2019」を可視化する対話型ダッシュボード画面
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米国内での感染状況を追跡する

 米国内の検査率や感染率について、最も包括的な情報提供を行っているのがCOVID-19 Trackerプロジェクトである。このプロジェクトのデータは、WebページGoogleシート、またはパブリックAPIを介して閲覧することができる。

 このプロジェクトは2020年3月初旬に、米疾病管理予防センター(CDC)から検査情報が発表されない事態を懸念したRelated Sciencesの創設者と、The Atlanticとの業務提携からスタートした。両社はボランティアを公募し、各州のWebサイトをクロールしてデータを集約し、APIを介してデータセットを一般公開するためのソフトウェアパッケージ一式を短期間で開発した。

 プロジェクトは速やかに進められ、ソースコードとデータセットを共有した。以前、Our World in DataCOVID-19検査に関するページは、CDCが発表するデータとCOVID19 Trackerのデータの両方を掲載していたが、現在ではCOVID19 Trackerのデータのみを掲載している。

治療法研究のためのボランティアコンピューティング

 COVID-19については、疫学的な研究だけでなく、ワクチンや治療法の発見を目的とした科学的な研究も行われている。「Folding@home」(画面3)は、コンピュータによる医薬品の設計をはじめとした多様な目的のため、ボランティアが提供するPCリソースを使って、分子動力学モデリングを行う分散コンピューティングプロジェクトである。

画面3:ボランティアが提供するPCを使って分子動力学モデリングを行う分散コンピューティングプロジェクト「Folding@home」のWebサイト画面画面3:ボランティアが提供するPCを使って分子動力学モデリングを行う分散コンピューティングプロジェクト「Folding@home」のWebサイト画面
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 Folding@homeでは、COVID-19を的に絞り、創薬標的の候補としてのタンパク質を発見するための取り組みを開始した。このプロジェクトのデータは、レポジトリに保存されている。Folding@homeは、オープンソースプロジェクトであるため、データセットやソフトウェアをすべて公開している。

市民向けのモバイルアプリ

 WHOのアプリケーション開発チームは、COVID-19と戦う世界中の人々を支援するためのモバイルアプリケーション開発を急ピッチで進めている。ダニエル・クラフト(Dr. Daniel Kraft)氏が率いるアプリチームは、住民に地域の情報を提供するだけでなく、その他のユーザーに正確な情報を伝えるため、公衆衛生当局へのフィードバック機能を備えたアプリの開発を目指している。

●Next:COVID-19に関する科学データの可視化を目的とする多くの小規模プロジェクトが進行

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