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[ユーザー事例]

プロセス可視化・改善で先進13社が取り組んだこと─Uber、BMW、Bosch、ABBなど欧米プロセスマイニング事例

先進ユーザーに学ぶ課題とアクション─Celosphere Live 2020[事例編]

2020年5月26日(火)田口 潤(IT Leaders編集部)

医療におけるX線装置やCTスキャンと同じく、プロセスマイニングは企業の業務に内在する障害やその広がりを可視化する有用なツールだ。しかし医療でも企業でも、難しいのは可視化した後である。障害は取り除く必要があるか/どのように改善できるか/改善策は本当に正しいか/実務を担う現場の納得や協力をどうやって得るか……複合的で一筋縄ではいかない問題が次々に出てくる。そこで参考になるのが先進ユーザーの取り組みである。本稿ではCelosphere Live 2020に登場した13社の事例を一挙に概観する。

●Celosphere Live 2020[技術動向編]プロセスの発見から自律/自動化へ─プロセスマイニングの進化と超流動企業への道筋
●Celosphere Live 2020[事例編:独ロバート・ボッシュ]“組織のデジタルツイン”でプロセス改善を迅速化─独ボッシュのプロセスマイニング実践

 プロセスマイニングツールは導入しさえすれば即、効果を発揮するような“銀の弾丸”ではない。もちろん各種システムをつないでログデータを集めたり、分析基盤を構築・運用したりといった技術的なハードルはかなり低くなり、以前に比べれば導入は容易になっている。しかし現場の拒否反応やある種の抵抗、マネジメントの無理解などの人的・組織的な問題はそうではない。

図1:独BMWは7つの項目を挙げて、プロセスマイニングの定着拡大が簡単ではないことを示した
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 図1を見ていただきたい。これはCelosphere Live 2020で独BMWが示したものである。ざっくり意訳すると次のようになる。

1. プロセスを透明にすることは、痛みや困難を引き起こす!
2. 分析に必要なビジネス価値を定量化・定義するのは、一般的でも簡単でもない!
3. ボトムアップ型のアプローチは、適用規模の拡大を困難にする
4.(プロセス変革の)鍵を握るユーザーを動かすには時間がかかるし、簡単ではない
5. データを収集して変換するのに、CoE(取り組みの統括組織)の60~70%の時間を要する
6. ビジネス部門が違うと、異なるソリューションが必要になる
7. プロセスマイニングの世界は急速に変化し続けている。常に学ばなければならない

 5.と7.を除くと、いずれも人や組織に関わる指摘であることがわかる。例えば1.の「プロセスを透明にすることは、痛みや困難を引き起こす!」を考えよう。コンプライアンスなどのために必要な業務や、他部署とのやりとりを伴う業務に対する不満はあっても、「自分たちの主たる業務に問題があると考える組織や人は多くない」(独BMWのプロセスマイニング・RPAプロダクトオーナー、パトリック・レヒナー〈Patrick Lechner〉博士)。もしそうなら何らかの改善策をとるはずだからだ。

 仮に外部から見て何らかの問題があるにしても、そこには理由や言い分がある。取引先の事情から、あるいは過去の経緯や慣習から必要だし実施しているといったものだ。結局、プロセスを可視化すれば何らかの問題や課題が見つかり、それは関係するすべての部門や人に何らかの痛みをもたらす。そのためプロセスマイニングは自部門には必要ないと考えられがちだし、積極的な賛同も得にくい。

 2.の「分析に必要なビジネス価値を定量化・定義するのは、一般的でも簡単でもない!」も同様だ。正確性、スピード、さまざまな事情のある取引先や顧客への対応など、何を優先するかは部署ごとにさまざまであり、関係する部門や人のすべてが納得できる指標を掲げるのは難しい。ビジネスプロセスマネジャーやビジネスプロセスアナリストといった専門職や職制がある欧米企業でこうなのだから、日本企業がプロセスを変革する困難さは推して知るべしだろう。

 結果として、工場や物流の現場ではリーンシックスシグマ(Lean Six Sigma)やカイゼン活動に取り組んできた企業でも、オフィス業務に関しては“ベストエフォート”型にとどまってきた。そのことは1990年代のBPR(Business Process Reengineering)や2000年代のBPM(Business Process Management)といった取り組みが頓挫してきたことから明らかだ。

 事実、クラウドやモバイルが普及してIoTやAIによる自動化の機運が広がる中でも、AI-OCRやRPAを使った部分的な自動化はあるものの、エンドツーエンドのビジネスプロセスは大きくは変わっておらず、20年前あるいは30年前のそれを踏襲している。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策でリモートワークを導入しても、印鑑を押したり決裁したりするために出社を余儀なくされたケースの多さは、そのことをあらためて証明した。

 しかし欧米でプロセスマイニングの取り組みが広がる中(図2)、これ以上、手をこまぬいているわけにはいかない。関連記事[技術動向編]プロセスの発見から自律/自動化へ─プロセスマイニングの進化と超流動企業への道筋で示したように、手術にレントゲンやCTスキャンを使うのと同様に、まず現状を可視化し、その上でどこに手を入れ、どう変革するかを計画する必要がある。それはデジタルトランスフォーメーション(DX)に必須だし、少なくとも何が起きているか、先進企業はどんな取り組みをしているかを把握することは有用だろう。

図2:プロセスマイニングでサプライチェーン高度化に取り組む企業群。3Mやコカ・コーラの名前もある
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 幸い、コロナ禍の中で行われたCelosphere Live 2020はオンライン開催であり、コンファレンスの公式サイトで全セッションの動画が公開されている。以下では、Celosphere Live 2020で紹介された事例セッションの概略(次ページの表1)と、なかでも目にとまった講演の模様を紹介する。多くのセッションは20分~30分程度の講演とQ&Aという構成だが、全セッションを視聴するには相当の時間がかかる。ここで取り上げる資料を手がかりに、オンライン動画を拾い見していただくとよいと考えるからだ。

 なお、一部の企業については個別にも紹介しているので、そちらも併せてご一読いただきたい(関連記事“組織のデジタルツイン”でプロセス改善を迅速化─独ボッシュのプロセスマイニング実践)。

●Next:Celosphere Live 2020で紹介された先進ユーザー13社の取り組み一覧

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