ガートナー ジャパンは2020年8月19日、米ガートナー(Gartner)が同年8月18日に発表した「先進テクノロジのハイプ・サイクル:2020年」を発表した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連のテクノロジーがハイプサイクル上を急速に推移している。ソーシャルディスタンシング技術が初登場で「過度な期待のピーク期」となったほか、中国とインドで使われているヘルスパスポートが「黎明期」に登場した。同社は2020年のハイプサイクルに顕著なトレンドとして、人をデジタルで表現するデジタルミーや、状況の変動に応じて動的に変化できるフォーマティブAIなど5つを挙げている。
米ガートナー(Gartner)の先進テクノロジーハイプサイクル(Emerging Technologies Hype Cycle)は、ビジネス戦略の担当者や研究開発のリーダーなどが先進テクノロジーのポートフォリオを策定する際に考慮すべきテクノロジーとトレンドとして、同社が業種横断的な視点から分析を行い作成したグラフである(図1)。
![図1:先進テクノロジのハイプ・サイクル:2020年(出典:ガートナー ジャパン、(2020年8月)](/mwimgs/4/5/600/img_45fd7baf22374b6587039b61af715a44101107.jpg)
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ハイプサイクルは、テクノロジーの普及度やトレンド遷移を示すガートナー独自のグラフであり、テクノロジー普及のプロセスを、黎明期、過度な期待のピーク期、幻滅期、啓蒙活動期、生産性の安定期の5段階に分け、それぞれのテクノロジーをグラフ上にプロットする。今回発表したのは先進テクノロジー版であり、他の分野別ハイプサイクルよりも注目度が高い(関連記事:ガートナー、先進テクノロジーのハイプサイクル2019年版を発表、5Gやエッジ分析が期待のピーク)。
先進テクノロジーハイプサイクル2020年版では、1700を超えるテクノロジーを分析したうえで知見を抽出し、30の先進テクノロジーおよび5つのトレンドとしてまとめ、提示している。今後5~10年にわたって高度な競争優位性をもたらす可能性が高い一連のテクノロジーがハイプサイクル上に並んでいる。
COVID-19関連技術がハイプサイクル上を急速に推移
2020年版のハイライトの1つは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックに関連する2つの先進テクノロジー(ソーシャルディスタンシング技術とヘルスパスポート技術)が、ハイプサイクル上を急速に推移していることである。ガートナーでは、いずれのテクノロジーも今後2年未満で生産性の安定期に達すると見込んでいる。
ソーシャルディスタンシング技術は、主にプライバシー上の懸念からメディアで大きな注目を集めている。先進テクノロジーハイプサイクルに初登場であるにもかかわらず、過度な期待のピーク期に位置している。ガートナーによると、従来のハイプサイクルでは、初登場で過度な期待のピーク期に位置するテクノロジーの例はほとんどなかったという。
ヘルスパスポート技術は、市場への浸透度が対象ユーザーの5~20%しかない技術でありながら、例外的に先進テクノロジーハイプサイクルで取り上げた。こうした例は滅多にないという。同技術は、中国(Health Code)とインド(Aarogya Setu)において公共の場所や交通機関を利用するために必須であることから、これらの国ではすでに何億もの人々が利用している。
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