戸田建設は、全国の作業所を中心とした全社員約5600人(派遣社員を含む)に向けて、「Dropbox Business Enterprise」を導入した。安全な情報共有システムを構築し、働き方改革を推進する考えだ。Dropbox Japanが2020年9月8日に発表した。
戸田建設は、Dropbox Businessを国内全作業所に導入した。約5600人で情報を共有する。取引先や協力会社とのデータ共有を安全に行うとともに、自宅や外出先など場所を問わずに必要なデータへアクセスできる環境を構築した(図1)。
この結果、建設作業所を中心とした全社働き方改革の推進を図れるようになった。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止に向けた、テレワークの拡大のための新たな業務体制にもスムーズに移行できた。
従来同社は、作業所で物理サーバー(NAS)と「G Suite」を併用していた。しかし、既存の製品では、特定サービスのアカウントを利用する必要があったり、一部の取引先や協力会社とは各社のポリシー上社外共有ができないなどの課題があった。こうした経緯で2019年4月頃からクラウドサービスを検討し始めた。
クラウドサービスの選定にあたっては、以下の3点を考慮した。
- 発注者や設計事務所、協力会社や資機材メーカーとスムーズで安全な情報共有や共同作業を行う環境を構築できる
- 電波状況の悪い超高層階や地下階、僻地にある建設作業所でもパフォーマンスを確保できる
- ITリテラシーの有無に関係なく、誰もが容易に操作できる
数十GBのファイルを扱うことがあるBIM(ビルディングインフォメーションモデリング)運用部門で評価した結果、電波のつながりにくい場所でもダウンロードエラーが起こりにくいなどの評価を得たことから、Dropboxを採用した。
Dropbox導入で、場所を問わずにデータにアクセス可能に
Dropboxを導入した結果、インターネットに接続できるところであれば、場所を問わずデータへのアクセスが可能になった。例えば、工事現場でもiPadで常に最新の図面や資料を確認できるようになった。在宅勤務中や出張中でも事務所で使っているデータにアクセスできるようになった。オフラインモードの利用によって、ネットワークの状況が悪い環境下でも資料の更新ができることも、働き方改革の推進につながった。
また、従来は設計事務所や協力会社との図面のやりとりはメールの添付で行っていたが、これを改められた。以前は、送付できるデータ量に制限があるため、ファイルごとに圧縮をしたり、大容量送信サービスを使用したりと、送信作業に時間を取られていた。変更が発生するたびにバージョンが異なる図面が生まれるため、図面の最新版管理にも課題を抱えていた。
Dropboxの採用により、URLリンクでデータを共有できるようになった。フォルダに対して閲覧権限を与えることも可能になった。これらによって、データを送付する作業の負荷を軽減できた。相手によって閲覧できる資料を限定したり、逆に共同で施工図を編集したり、といった使い方が可能になった。
拠点の物理サーバーが不要に
さらに、従来は各事務所に物理サーバーを設置して管理していたため、落雷・大雨・火事による故障、盗難などでデータ紛失してしまうリスクを抱えていた。Dropboxを導入したことで、新たに着工した新規作業所では物理サーバーの設置を取りやめた。機器メンテナンスの人件費や、数年ごとの設備更新費用も削減できた。今後は、稼働中の作業所でもDropboxへのデータ移行を進め、物理サーバーの撤去を行う考えだ。
戸田建設は今後、共同作業に特化したオンラインのドキュメントツールであるDropbox PaperやDropbox Spacesを活用する。これらのツールにより、図面や会議資料、文書などを共同で編集したり、コメントを追加したり、担当者に業務を割り振ったうえで進捗管理を行って共有したりできる。すでに一部の部門で活用しているが、今後は全社的に活用することで共同作業を加速する。