クラウドシフトの影響もあって、エンタープライズストレージ業界は右肩下がりのトレンドにあると言われる中、好調に成長を続けているのが、オールフラッシュストレージ専業の米ピュア・ストレージ(Pure Storage)だ。企業カラーのオレンジをあしらったハードウェア筐体のイメージが強いが、本来の強みとするソフトウェア技術や、顧客のニーズをとらえた提供モデルの強化拡充に注力している。ピュア・ストレージ・ジャパン 代表取締役社長の田中良幸氏と同社 市場開発部 部長の藤井洋介氏に、ユーザーのストレージ利用の変化やそれを踏まえた事業戦略などを聞いた。
コロナ禍の影響を受けずに業績を伸ばす
──新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックで、多くの企業が「後戻りできない変化」に直面する中、ピュア・ストレージの場合、ビジネスにどんな影響があるのでしょう。
田中氏:当社の2021年度第1四半期(2020年2~4月)の決算内容がいくつか物語っているかもしれません。第1のポイントは、期の売上高が3億6710万ドル、前年比で2ケタ成長となる12%増という結果です。この時期はコロナが蔓延して世界の多くの国でロックダウンが行われ、対面営業はできないという状況でしたが、ビジネスは好調を維持できました。ストレージ業界全体が困難を極める中で、ピュア・ストレージは2ケタ成長を維持しており、コロナ禍でもそれが維持されたわけです。
理由として、サプライチェーンとサポートに高い評価をいただいている点があります。前者に関しては今回、海外の生産拠点などが停止してしまい、サプライチェーンが混乱する例もあったようですが、当社では受注から出荷まで何ら影響を及ぼさなかったのです。こういう緊急事態でこそ、急なご用命に対しての即座のデリバリー、さらに人手を介さずに製品を運用管理できていること。これらがお客様からの評価の証になっています。
加えて、マルチクラウドやサブスクリプションといったクラウド時代の利用形態が進んでいます。全体の3分の1、1億3千数百万ドルという売上げがクラウド/サブスクリプション関連のもので、当社からの新しい提案であるPure as-a-Serviceの需要が急速に伸びた四半期になりました。
結果、コロナ禍にもかかわらず、お客様の数は26%伸びました。もちろん、いくつかの影響は受けています。例えば、クラウドや即納、ゼロタッチといった点にお客様の関心が集まるようになり、「予算が取れていないからとりあえず従量課金で」という要望が非常に増えています。にもかかわらず、お客様の数と売上げに関しては順調に伸びた形です。
この理由は、「すべてのお客様が、最初の製品導入から2年以内に導入規模を2倍にしている。上位のラージエンタープライズに限定すると、1年半(18カ月)で10倍に達する」という傾向で説明されています。
ストレージのクラウド/サブスクリプション利用が加速
──ピュア・ストレージが顧客に促している新しい利用形態へのシフトを、今回のコロナ禍が後押しした形でしょうか。
田中氏:そうですね。本社CEOのチャーリー・ジャンカルロ(Charles Giancarlo)は今、グローバルの各拠点に「安全で柔軟な将来」「すべてを自動化」「固定概念を打破」という3つのミッションを発信しています。なかでも、安全で柔軟な将来について深く考え直す契機となったのが今回で、コロナ禍を機に、お客様のDXの取り組みが加速した面は確かにあると感じます。
さらには、「クラウド時代」と言うときのクラウドの定義すら、今回再考するきっかけにもなったのではないでしょうか。つまり、クラウドというのは運用方法なので、オンプレミスでもクラウド的に使えるならそれが理想的なのではないか、ということです。クラウド的なあり方として、何が安全か、何が柔軟かという点について、皆が改めて考えるようになったと思っています。
自動化に関しても、コロナ禍の影響で人が動けない場面が増えましたので、「自動化やリモートで、何をどのくらいできるのか」「生産性を上げるためにいかに自動化できるか」といった以前からの課題への取り組みが、このタイミングで一気に加速した形です。あとは、我々が取り組むPure as-a-ServiceやModern Data Experienceが、まさにこうした状況下での有効なソリューションとして注目を集めた面もあると思います。
──現在では競合各社も従量課金/サブスクリプション型でストレージを提供し始めています。競合に対してのアドバンテージは何でしょうか。
藤井氏:ピュア・ストレージは設立11年目を迎える会社ですが、古参の大手ベンダーからも意識される存在になれたのかもしれません。そうした中で、当社の確かな強みは、やはり設立以来提供を続けているEvergreen Storageですね。単に継続利用を促すプログラムというよりも、我々が自社開発でハードウェアやソフトウェアを作っているからこそ実現できることがあります(図1)。
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Evergreenでは、「利用3年目以降、ストレージのコントローラをアップデート、その際のデータ移行は不要」を保証しています。これが可能なのは、当社が互換性を維持したコントローラの設計を続けているからです。SSDに関しても、この先どんなデバイスが出たとしても、デバイスドライバを組み込んでハイブリッドで長く使っていただけるなど、ソフトウェアがすぐれているからこそ提供できることがたくさんあります。ベースとなっているのは、創業当初から約4年を費やして開発したファームウェアで、これがすべての価値の土台となっています。
●Next:ストレージのハイブリッド利用形態、国際会計基準の変化への対応
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