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重大事案から4年、セゾン情報システムズが挑んだ「バイモーダル組織への変革」の道のり

2020年12月28日(月)阿久津 良和(Cactus)

2016年3月、セゾン情報システムズは同社経営を揺るがすレベルの深刻な事案を公表した。筆頭株主であるクレディセゾンから請け負った基幹システム開発プロジェクトの遅延により、約150億円の和解金を支払うことになった事案だ。同社はこの事案を糧に、強みのIT施策を自ら駆使することで、バイモーダルな組織風土への転換に挑んだ。2020年12月22日に開催されたHCM(人事・人材管理)分野のコンファレンス「AgileHR Online Conference」(主催:ギブリー)に登壇したセゾン情報システムズのキーパーソンが、4年間の取り組みの軌跡を振り返った。

 AgileHR Online Conferenceのセッションに登壇したのは、セゾン情報システムズ 執行役員 HR戦略部 部長の小山和也氏(写真1)。「今こそ考えるDX、経営にインパクトを与える"攻めのIT組織"をつくりだす─IT人材採用・育成を通じた中長期的な組織風土変革」と題して、バイモーダル企業への組織変革施策を紹介した。

大規模システムの開発遅延の事態に社員が萎縮

 小山氏は、信用失墜を招いた4年前の事案を「神話の崩壊」と振り返る。さかのぼること今から約20年前、セゾン情報システムズはSIビジネスの拡大に舵を切った。2004年にはクレディセゾンの大規模基幹システム開発に着手し、足かけ10年をかけたシステムは、1カ月前に実施したプロジェクト評価で「可」の評価だったにもかかわらず、2014年にリリース遅延を招いてしまった。

写真1:AgileHR Online Conferenceに登壇したセゾン情報システムズ 執行役員 HR戦略部 部長の小山和也氏(左)。聞き手はギブリー カスタマーサクセスマネージャーの森康真氏

 「プロジェクトに関わっていた社員はリリースできる状態にないことを肌で分かっていた。不安と恐怖で張り詰めた雰囲気になっていた」(小山氏)。

 翌年の2015年にはリリースに至ったものの、筆頭株主であるクレディセゾンから損害賠償請求を受け、2016年3月に国内IT関連訴訟では当時最高額の149億7,500万円を支払うという条件付き和解に至った。ADR(裁判外紛争解決手段)による第三者評価を経て、当時の社内には「上意下達のヒエラルキー型組織、閉鎖的で縦割りのコミュニケーション、おかしいと感じても意見が言えない雰囲気があった」(同氏)という。

 このような大きな危機に直面したセゾン情報システムズが再びスタートラインに立ったのが2016年。ここから同社は経営体制や経営方針の刷新、希望退職プログラムを施行し、組織風土変革の起点となった。

TRIBE SHIFTビジョンを掲げて組織変革に着手

 セゾン情報システムズの組織変革はどのように遂行されていったのか。「人事担当者が共有していたのは『TRIBE SHIFT』。同じ志を持った人たちが縦ではなく横につながる風土にシフトする」(小山氏)とそのビジョンを説明した。

 具体的な施策として、「管理や制度からの脱却、共感と共鳴と協働、権限委譲とノールールポリシー、自治という聖域の醸成、体質改善と抱擁的安心の提供、ワークスタイルビッグバン」(小山氏)に取り組み、現在はジョブ型雇用/人事を指すファンクションマネジメントに着手している。これらのキーワードを並べた理由を小山氏は、「『改革』では悪役を成敗するイメージを持たれてしまうためだ」と説明した。

図1:バイモーダルを指向した組織改革(出典:セゾン情報システムズ)
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 図1は、バイモーダルを指向した同社の組織改革のポイントだ。技術力向上を目指すためのモード1改善では、テクノベーションセンターを設立してモダン開発の推進や、社内で“ジェダイ”として認められたプロジェクトマネジャーによるプロジェクト評価システム「PMジェダイ評議会」を導入した。

 モード2の文脈では、先端技術の調査や支援、PoC(概念実証)立案・支援、各テクノロジーの研究所も設立した。その中にはわずか9名で構成されたブロックチェーンラボも含まれる。風通しのよい企業風土を醸成するために、コミュニケーションプラットフォームとして「Slack」の導入も行った。

 また、今期からはテクノベーションセンターで研究された技術を、現場のビジネスモデルへ適用可能か判定するビジネスベーションセンターを新たに設置。小山氏は、組織風土変革を成功させる秘訣として、「唐突にITツールや施策を導入しても効果はでない。体質を変えること。波紋を広げることなく、静かに穏やかに丁寧に1つ1つ取り組むことで、水面下での定着につなげることが重要だ」と述べた。

●Next:実際の人事施策で実現した定量的効果と今後の計画

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