[市場動向]
GAIA-Xに接続して欧州内の重要データへのアクセスを可能に─NTT Comがデータ流通基盤を開発
2021年4月8日(木)日川 佳三(IT Leaders編集部)
NTTコミュニケーションズ(NTT Com)は2021年4月8日、欧州(EU)のデータ流通基盤「GAIA-X」と相互接続するデータ流通基盤のプロトタイプを開発したと発表した。このプロトタイプを使って、秘匿性が高い工場の製造ラインデータをスイスからドイツと日本に安全に流通させる実証実験に成功した。GAIA-Xと相互接続できるデータ流通基盤として、2021年度中の商用提供を目指す。
NTTコミュニケーションズ(NTT Com)は、欧州が構想・推進するデータ流通基盤「GAIA-X(ガイア-エックス)」との間で相互接続するデータ流通基盤のプロトタイプを開発した。2021年度中の商用提供を目指す。
NTT Comのサービスを介することで、GAIAに参加している欧州企業などとの間で重要なデータのやり取り/共有が容易になるという。同社はGAIA-Xに対応しない場合、欧州内の重要データにアクセスできなくなるリスクを指摘している(図1)。
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GAIA-Xは、欧州が自国・地域のデータ主権の保護を目的に構想を進める、データ流通のためのインフラ基盤である。2019年10月に概要を発表した。(関連記事:GAFAへの危機感あらわに─ドイツ政府が欧州クラウド/データ基盤構想「GAIA-X」を発表)。
GAIA-Xは、欧州内でデータを安全かつ自由に流通可能なインフラを目指しており、現在、350以上の企業や団体が参加している。2021年秋以降にプロトタイプの運用が始まる(図2)。
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データ主権保護とセキュリティで産業データの流通を促進
GAIA_Xが掲げる「データ主権の保護」とは、データを持っている企業の権利を守ることを指す。データの所有者は、データを利用できる相手を指定できる。指定した相手だけがデータを利用できる仕組みをシステムとして実現する。情報漏洩防止などのセキュリティも確保する。こうしたデータ主権保護によって、秘匿性が高い産業データを企業間で流通しやすくする(図3)。
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データ主権を保護しながらデータをやりとりするための中核技術が、International Data Spaces Association(IDSA)が定めている技術コンポーネント「IDSコネクター」である(図4)。通信ソフトウェアであり、機密データと公開データを区別して管理するほか、通信相手を認証して、特定の相手とだけデータの受け渡しができる。仕様やソフトウェアはオープンソースとして公開している。ドイツ標準の工業規格(DIN SPEC 27070)に採用されており、現在、ISO標準化を目指している。
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GAIA-Xのユースケースの1つとして、装置のメーカーが保守業者と設備稼働データを共有する使い方が紹介されている(図5)。装置の稼働データを把握できるようになれば、故障の予兆を検知して事前対応型の保全サービスを提供可能になる。
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●Next:NTT Comが実施した実証実験の内容と、今後提供するサービスの構想
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