ITサービスベンダーのJBCCは2021年7月12日、オンプレミスのデータセンターで130台のサーバーで稼働していた50種類の業務システムを、Amazon Web Services(AWS)に移行したと発表した。移行にかかった時間は5カ月間で、仮想サーバーをオンプレミスデータセンターのVMware vSphere環境からVMware Cloud on AWS環境へとそのまま移行した形である。移行により、データセンターの費用を削減した。
JBCCは、オンプレミスで稼働していた業務システム約80システム(サーバー230台)をクラウドに移行した。いずれも、サーバー仮想化ソフトのVMware vSphere環境で動作する仮想サーバーである。このうち約30システムは、SaaSに切り替えたほか、AWSの移行サービスを用いてAWSのインスタンスに移行した(図1)。
![図1:業務システム130サーバーをVMware Cloud on AWSに移行した(出典:JBCC)](/mwimgs/2/2/517/img_220ffde2e43285bf2550ab952f2d236a28781.jpg)
JBCCによると、当初はすべてのシステムをAWSに移行する予定だったという。「OSやソフトウェアのバージョンが古かったり、移行ツールが適さなかったりするシステムが多く、AWSへの移行が遅れがちだった。移行計画をそのまま進行しても、完了までに時間がかかってしまうことが分かっていた」(同社)
こうした経緯から、残りの50システム(サーバー130台)については、AWS環境には移行せず、VMwareの仮想化基盤をそのままAWS上で運用できる「VMware Cloud on AWS」環境に移行した。対象業務は、人事、見積、請求、発注、工数管理、経営分析などである。
VMware Cloud on AWSは、AWSのデータセンター上に用意したベアメタルサーバー上でVMware の仮想化ソフトウェアを動作させた構成。そのため、オンプレミスのVMware環境から仮想サーバーを移行して動作させる使い方に適する。
同社は当初、VMware vMotionを活用して、稼働中のサーバーを停止させずに移行する予定だった。ところが、一部のシステムがvMotionでは移行できないことや、移行前のバックアップ設計が必要になることなどから、サーバーを再起動する方式での移行を選択したという。
JBCCでは、システム移行の効果について、「現行の運用方法をほとんど変えることなく、高額なデータセンターを閉鎖できた」と評価している。データセンターの賃料やネットワーク費用を削減しつつ、安定的なシステム運用を実現したとしている。