日本IBMは2021年9月9日、Powerプロセッサ搭載サーバー「IBM Power E1080」を発表した。同年9月17日に出荷を開始する。Powerサーバーシリーズのハイエンドモデルで、IBM Power10プロセッサを搭載する最初の製品である。従来モデル「IBM Power System E980」と比べて、消費電力あたりの処理性能が1.5倍に向上しているという。
日本IBMの「IBM Power E1080」は、IBM Powerプロセッサ搭載サーバーシリーズのハイエンドモデルである(写真1)。
OSは、オフコンのIBM i、UNIXのAIX、Linux(Redhat/SUSE)が動作する。IBM PowerVM(論理パーティショニング)による仮想サーバーを利用できる。コンテナ運用基盤のRed Hat OpenShiftの動作もサポートする(関連記事:日本IBM、POWER搭載サーバー(AIX/IBM i/Linux)の上位モデルを刷新)。
Power E1080は、最新のIBM Power10プロセッサを搭載している。プロセッサの世代刷新により、前世代のPower E980と比較して、ソケットおよびシステムレベルで、コアあたりの性能が最大30%向上し、処理性能が50%以上向上している。また、Power E1080はPower E980と比較して、同等の処理を行う際のエネルギー消費量が33%低減しているという。
IBMが実施した、SAPアプリケーションの性能を測定するベンチマークテスト「SAP Application Performance Standard」において、Power E1080は、8ソケットシステムで世界記録となる、17万4000以上の2層ベンチマークユーザーの値を達成している(図1)。
拡大画像表示
CPUの刷新によって、メモリー暗号化の性能も向上している。Power9と比較してPower10はコアあたりの暗号化エンジンの数が4倍になっており、前世代のIBM Powerサーバーと比較して、AES暗号化のコアあたりの処理を2.5倍高速にしている。
AIの推論性能も向上した。コアごとに4つのMMA(Matrix Math Accelerator)エンジンを搭載しており、前モデルと比較して、AI推論の精度は最大で5倍以上という。TensorFlowやPyTorchなどの一般的なフレームワークを用いることで、ONNXで利用可能な学習済みのAIモデルについては、コードを変更することなくx86ベースのサーバーからPower E1080にデプロイすることができる。
ハイブリッドクラウド環境の運用に向くとしている。オンプレミスのE1080と、論理パーティショニング区画をクラウドサービスの形で提供するIBM Power Virtual Serverを組み合わせて運用する。オンプレミス上にある基幹システムを、ミドルウェアの追加やアプリケーションの変更なく、クラウドに移行できるとしている。
ユーザーは、従量課金モデル「Power Private Cloud with Dynamic Capacity」の利用を選べる。未使用のCPU容量を拡張・縮小し、追加で使用したリソースは使った分だけ支払うモデルである。クラウドのような支払体系をオンプレミスに適用することができる(関連記事:日本IBM、Power SystemsサーバーにRed Hat OpenShiftを事前導入したシステムを販売)。