[インタビュー]

「DXや組織変革の牽引者はほかならぬCOOだ」─SAPジャパン鈴木洋史社長

SAPの変革方法論を伝授する「COO養成塾」で目指すこと

2022年6月13日(月)末岡 洋子(ITジャーナリスト)

COO就任時に独SAPのグローバルな組織変革を牽引したクリスチャン・クライン(Christian Klein)氏が、CEO就任後初の「SAP Sapphire 2022」のステージで、顧客支援の注力ポイントとして「ビジネス変革」「サプライチェーン」「サステナビリティ」という3つのキーワードを示した。SAPジャパン 代表取締役社長の鈴木洋史氏に、クライン氏が打ち出した指針の真意と、日本企業で具体的にどう進めるかなどについて聞いた。

SapphireでクラインCEOが示したSAPの注力ポイント

──今年のSapphireでは、CEOのクリスチャン・クライン(Christian Klein)氏、CMSO(Chief Marketing and Solutions Officer)のジュリア・ホワイト(Julia White)氏など新幹部が登場し、「ビジネス変革」「サプライチェーン」「サステナビリティ」の3つを企業の優先課題としてSAPの注力ポイントを紹介しました。これらの課題に、日本企業の関心も高まっているのでしょうか?

 コロナ禍で、デジタルトランスフォーメーション(DX)の下に基盤そのものを見直そう、グローバルで統一しようといった動きは進んでいます。特に製造業で加速しています。

 2021年は日本でも「RISE with SAP」の提供を開始しました。お客様のクラウド移行を支援し、その後の安心安全な運用を含めてしっかりサポートしていくことを意識しています。「ツールを使う」「クラウドを使う」だけでなく、そのための体制をどうするのかという企業変革を共にするための取り組みを複数展開しています。

写真1:SAPジャパン 代表取締役社長 鈴木洋史氏

SAPの社内変革方法論を形にした「COO養成塾」とは

 その1つが、2021年7月からスタートしたSAPジャパン主催の「COO養成塾」です。クリスチャンは、CEOになる前にCOOとしてSAP自身の変革を推し進めた人物で、企業カルチャーを変えることにも注力しました。こうして変革をどんどん現場に浸透させるためにトップみずから動くCOOをもっと増やそうという試みです。SAP社内では、このイニシアチブを“トップX”と呼んで、人事、経営管理、研究開発などでの変革を進めました(関連記事「SAPの顧客はシステムの移行ではなく、経営の変革に時間を費やしている」─クリスチャン・クラインCEO)。

 日本のCOO養成塾では、社長が任命した幹部/幹部候補1名に、SAPの社内変革ノウハウを学んでいただきます。隔週土曜日、丸1日の受講で他の参加者と議論をしながら、自社に当てはめた時にどういう推進体制を作るべきなのかを考え、最終的には自社のパーパスを磨くところまで取り組んでいただきます。3カ月ごとに開催していて、次回で5期目です。予想以上に好評で、「個別にもお願いしたい」というお客様もいらっしゃいました。こんな試みを事業ではなく無料で提供しています。

──CEOやCIOではなく、COOなのですね。

 はい。SAPはグローバルで、営業、研究開発、製品開発など各部門長の右腕として、部門のCOOが必ず置かれています。SAPジャパンにも私の右腕のCOOがいます。SAPはCOO間のネットワークが強く、グローバルで決めた標準のプロセスを自分達の組織に速やかに適用していく役割を負っています。例外が生じたら、なぜ、それが必要なのかを取締役に説明し認めてもらう必要があります。基本はどこに行っても同じやり方です。

──少し前から、SAPが技術提供だけでなく企業の組織・文化の領域にどんどん入り込んできていると感じます。

 そうですね。背景にはSAPのソリューションをご利用いただくにあたっての思いがあります。2000年前半に日本企業の間でERP導入が進みましたが、自社業務に合わせる形でアドオンをたくさん作る状況が生まれました。アドオンが多いほどメンテナンス費用がかさんで、新しい技術の採用が難しくなります。

 この反省から、今取り組まれているクラウド移行では、自社の業務をERPの標準に合わせて導入していただくことを薦めています。そうすれば、新技術を積極的に取り入れながらシステムを進化させることが可能になるのです。

 一方で、自社の強みがある、標準構成でカバーできない領域については、ローコード開発を備えたアプリケーション開発・実行プラットフォーム「SAP Business Technology Platform(BTP)」を使ってシステムを拡張していくモデルが有効になります。

 こうした新しいモデルにシフトする過程では、技術だけでなく、やり方そのものを変える意識改革が欠かせず、トップダウンが重要になります。日本企業は特に事業部門が強いため、全社横断で進めるためにはトップの力が必要です。

●Next:1年間で1回も使っていないアドオンが80%─プロセスマイニングが浮き彫りに

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