[調査・レポート]

2021年のERPパッケージ市場は前年から10%増、コロナ禍の影響から脱却─矢野経済研究所

2022年7月20日(水)IT Leaders編集部

矢野経済研究所は2022年7月19日、国内ERPパッケージライセンス市場の調査結果を発表した。2021年の市場規模は1278億円で、前年比10.1%増だった。2020年は前年比1.4%増と横ばいだったが、2021年は一転して2ケタ成長となった。2022年は前年比5.2%増の1345億円を予測している。

 矢野経済研究所は、国内ERPパッケージライセンス市場を調査した。2021年の市場規模はエンドユーザー渡し価格ベースで1278億円、前年比10.1%増だった。2020年は新型コロナウイルス感染拡大を要因とするユーザー企業の業績悪化を懸念して案件の先送りが発生したため前年比1.4%増とほぼ横ばいだったが、2021年は一転して2ケタ成長となった(図1)。

図1:ERPパッケージライセンス市場における規模の推移と予測(出典:矢野経済研究所)
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 2021年については矢野経済研究所は、コロナ禍によるマイナス影響が小さくなったことに加えて、先送りされたプロジェクトの多くが順当にスタートし、2020年の先送り分が追加需要として上乗せされたことが成長要因になったと分析している。「ERPパッケージライセンス市場は一時的な停滞を脱し、成長軌道に戻った。また、コロナ禍によって企業活動のデジタル化が進んだことから、クラウドでERPを利用する企業も着実に増えている」(同社)。

 「2022年は、電子帳簿保存法やインボイス制度といった法制度対応への注目度が高い。電帳法は改正による要件の緩和と共に、電子取引における電子保存の義務化に2年間の猶予が認められることになった。2023年10月にはインボイス制度の施行を控えており、ERPパッケージベンダーは猶予期間中にインボイス制度を含めた法制度対応の支援を進める意向である」(同社)。

 「ERPパッケージの法制度対応における機能変更は、保守サポートの範囲で無料または安価に提供されることがほとんどで、これをきっかけにERPパッケージライセンス市場で特需が起こることはない。しかし、ユーザー企業側の制度変更への関心は高い」(同社)。

 矢野経済研究所は、2022年のERPパッケージ市場は前年比5.2%増の1345億円になると予測する。「2021年には前年に先送りされた案件が上乗せされるという特需的な要因があったことと比べると、伸び率は下がる。一方で老朽化したレガシーシステムのリプレースや経営基盤強化といったニーズが市場の成長を支える」(同社)。

 また、コロナ禍で加速したクラウドでのERP利用は継続的なトレンドとなり、クラウドシフトはいっそう進展すると同社は見ている。「システム基盤はIaaSやPaaSが中心だが、SaaSの利用も拡大する」(同社)。

 なお、成長を鈍化させる要因として同社は、ウクライナ情勢の影響による資源価格の高騰や物価上昇、急速に進む円安などによる外部環境の悪化を挙げる。「しかし、ユーザー企業では経営環境の変化に対応するための手段としてERPに投資する前向きな姿勢が強まっており、景気後退が起こったとしても、ERPへの投資凍結や大幅な予算削減に直結することはないと考える」(同社)。

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