[市場動向]

東南アジアでのデータビジネスを支援─村田製作所とIIJがグローバルIoT基盤を提供へ

データ収集から販売支援まで担う「グローバルIoTデータサービスプラットフォーム」を2023年夏に提供

2022年10月18日(火)神 幸葉(IT Leaders編集部)

村田製作所とインターネットイニシアティブ(IIJ)は2022年10月4日、IoTプラットフォームに関する協業を発表した。両社は、IoTを基にしたデータビジネスを東南アジアで展開しようとする日系企業に向けて、データ収集から販売支援までを網羅した「グローバルIoTデータサービスプラットフォーム」を2023年夏から提供開始する。村田製作所がIIJの現地クラウド基盤を使い、2021年からインドネシア、タイで展開中の交通量情報のデータ提供サービスをベースに開発する。

日系企業の東南アジアでのデータビジネスを支援

 村田製作所(本社:京都府長岡京市)とIIJが、IoTによるデータビジネスを展開する日系企業に向けた支援で協業を開始する。2023年夏に「グローバルIoTデータサービスプラットフォーム」を共同で提供し、まずはインドネシア、タイ、マレーシア、ベトナムの東南アジア4カ国での事業展開を予定している。

 協業の背景として両社は、データビジネスにあたっては、さまざまなデータをタイムリーに収集、分析・加工し、複合的に活用するための仕組みが欠かせないことを挙げる。加えて、「データビジネス事業者は、ビジネスプロセスに求められるITパーツや基盤の整備だけでなく、各国のデータ保護法など現地法への準拠も考慮する必要がある」ことも指摘する。

 協業の下で開発するグローバルIoTデータサービスプラットフォームは、村田製作所が2021年からインドネシア、タイで展開している交通量データ管理システム「トラフィックカウンターシステム」がベースとなる。同システムは、高精度なセンシングにより、交通量だけでなく、乗用車・大型車など車種情報を分類した交通データを収集し交通情報を可視化する(図1)。

 村田製作所は、インフラシステムではなく、情報取得のプラットフォームとして同システムを運用し、顧客にデータを提供してきた。主要顧客であるインドネシア政府は、電子データ購入科目として同サービスを利用している。村田製作所は同政府の要望に合わせ、データをグラフ化、ダッシュボードの閲覧権、データのダウンロード権を販売している。

 同社によると、このビジネスはインフラ事業と受け取られることもあるが、IoT事業の取り組みの1つと位置づけている。村田製作所 IoT事業推進部 プロジェクトマネージャーの津守宏晃氏(写真1)は、「当社の主要事業である製品の製造販売とは異なり、トラフィックカウンターシステムは現地の企業が製品を活用したことで集まるデータを販売する」とビジネスモデルを説明する。

図1:トラフィックカウンターシステムのイメージ(出典:村田製作所、IIJ)
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写真1:村田製作所 IoT事業推進部 プロジェクトマネージャー 津守宏晃氏

 既存のトラフィックカウンターシステムも、IIJグループが現地クラウド基盤を提供している。また、SIerのトライポットワークス(本社:宮城県仙台市)がシステム構築、サーバー提供、オペレーションサービスなどを担い、データの販売を実現している。

両社のノウハウを投入したグローバルIoTデータ基盤

 今回協業で開発するグローバルIoTデータサービスプラットフォームでは、トラフィックカウンターシステムで培ったセンサー・通信技術やデータ分析手法、ビジネスモデルの知見、ノウハウを活用する。

 同プラットフォームの強みは、データを集めるセンサーデバイスから、伝送するエッジサーバー、ネットワーク、データを蓄積・加工するクラウドサービスまで、基盤となるシステムとその運用に加えて、収集したデータの解析、データの販売業務支援までを、ワンストップで提供できることにある(図2)。

 東南アジアでのデータビジネスに必要な機能とサポートがすべてノウハウとして既にある。そのため、「これから東南アジアでデータビジネスを始める日系企業は、同プラットフォームを導入するだけで、データビジネス事業のスタートが可能」(両社)としている。

 同プラットフォームの顧客対象として、東南アジアの現地市場への事業展開を検討する日系企業、とりわけIoTの高度活用に取り組む各種サービス業にフォーカスする。例として、公共交通における道路・設備の保守・保全、自動車をはじめとしたモビリティデータのトレーサビリティ管理、港湾・工業地帯などにおける現地勤務者のセンシング/QoL向上、スマート農業における土壌・水・生産管理などを挙げる。

 なお、初めに事業を開始する4カ国は、「トラフィックカウンターのビジネスの実績と、それに伴う発現地でのパートナーシップが有効活用できること、IIJが東南アジアで展開する現地クラウド事業が活発に活用されていること」(津守氏)から選定したという。

 IIJ IoTビジネス事業部長の岡田晋介氏(写真2)は、「自社の取り組みをサービス化して提供するのは珍しくないが、データビジネス実践のノウハウを生かしてグローバル向けのサービスを提供するのは新しい取り組み。差別化しながら事業展開していけると考えている」と両社の新たな協業への期待を語った。

図2:グローバルIoTデータサービスプラットフォームのイメージ(出典:村田製作所、IIJ)
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写真2:IIJ IoTビジネス事業部長 岡田晋介氏

 このほか、現地法規制に対応済みであることも同プラットフォームの強みであると強調する。岡田氏によると、「昨今、個人データや機密データの取り扱いについては、各国でデータ保護規制が厳格化されており、海外からのデータビジネス参入のハードル、リスクとなっている」という。

 この課題に対し、同プラットフォームでは、高いセキュリティ水準を担保したうえで、現地のデータ保護法に対応したIIJグループの現地クラウドサービスにデータを格納。現地オペレーターが主体となってデータビジネスの展開、販売の支援など体制づくりまでサポートする体制を敷いている(図3)。

 「法規制対策やシステム、体制までを一体化して運用する提供していくのが今回の協業の大きなポイント。現地の法規制に知見のない日系企業によるビジネス進出であっても支援する体制を整えていく」(岡田氏)。

図3:グローバルIoTデータサービスプラットフォームの特徴(出典:村田製作所、IIJ)
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●Next:両社のノウハウを集約したプラットフォームの機能・サービス

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