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ロンコ・ジャパン、トラック15台の配送ルートをAIで算出し、年間700万円を削減

経路の自動作成にあたって熟練技術者が条件を調整可能に

2022年10月31日(月)日川 佳三(IT Leaders編集部)

ロンコ・ジャパン(本社:大阪府大阪市)は、ルート配送の配送計画をAIで作成する実証実験に取り組んでいる。2021年3月時点では走行距離の最適化で年間360万円の燃料代を削減可能なことを確認した。2022年2月には、熟練技術者の声から、除外する経路(実際には走らない経路)をマニュアルで設定できるようにし、分割配送のコスト削減効果が少ないものについて分割配送を抑制可能な調整機能を付けた。2022年10月時点の効果(燃料費と有料道路利用料の削減効果)は年間700万円と、燃料費の削減のみだった2021年3月時点の年間360万円から約2倍になった。AIを開発・提供した沖電気工業が2022年10月31日、記者発表会で紹介した。

 物流会社のロンコ・ジャパンは、ルート配送をAIで効率化する実証実験に取り組んでいる。2021年3月の段階では、車両13台の走行距離を1日300km削減することによって、燃料費を年間あたり360万円減らせることを確認した(関連記事ロンコ・ジャパン、配送ルートをAIで算出する実証実験、車両13台の走行距離を1日300km削減)。

図1:ロンコ・ジャパンは、ルート配送の配送計画をAIで作成する実証実験に取り組んでいる。特徴は、同一の配送先に届ける荷物を複数に分割して複数台のトラックで別個に配送する“分割配送”の手法を取り入れたこと(出典:沖電気工業)
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 走行距離を減らすために同社がとった戦術が、同一の配送先に届ける荷物を複数に分割して複数台のトラックで別個に配送する“分割配送”である(図1)。例えば、従来の物流では、3カ所の届け先に対してそれぞれ1台のトラックを割り当てていた。これに対して分割配送では、3カ所ぶんの荷物を2台のトラックで運ぶ。トラック1台あたりの積載率を高め、より少ない台数のトラックで物流をまかなう仕組み。

 2021年11月の段階では、走行距離(燃料費)だけでなく、有料道路の利用有無を考慮し、燃料費と有料道路料を合わせてもっともコストを削減可能なルートを算出するようにした(関連記事ロンコ・ジャパン、トラックのルート配送最適化AIの試行運用を開始)。約1年間の実証期間を経て、2022年10月時点のコスト削減効果(燃料費と有料道路利用料を合わせた削減効果)は年間700万円であり、燃料費の削減だけだった2021年3月時点(年間360万円)と比べて約2倍になった(図2)。

図2:燃料費に加えて有料道路利用料も考慮してコスト削減案を算出するようにした。これにより、トラック数15台に対して年間で約700万円のコストを削減できるようになった(出典:沖電気工業)
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 2022年2月には、現場の声を反映する形で、2つの新機能を追加した(図3)。

図3:熟練技術者の声を反映し、除外する経路(実際には走らない経路)をマニュアルで設定できるようにしたほか、分割配送のコスト削減効果が少ないものについて分割配送を抑制可能な調整機能を付けた(出典:沖電気工業)
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 (1)まず、除外する経路(実際には走らない経路)を手作業で設定できるようにした。例えば、冬は雪で交通規制が発生する道路や、渋滞が起こり易い道路などである。AIは道路さえ存在すれば経路の候補として利用するが、実際には配送に適さない(リスクが高い)道路もある。これを、熟練担当者が手作業で事前条件として設定できるようにした。

 (2)さらに、分割配送のコスト削減効果が少ないものについては分割配送を抑制可能な調整機能を付けた。初期のAIは少しでもコストを減らせるなら積極的に配送を分割していたが、分割することによるデメリットも発生する。例えば、荷物の受け入れ側の処理が2回に分かれてしまい、ミスなどが発生しやすくなる。複数台のトラックが同時に到着してしまい、作業ができなくなる恐れもある。分割配送によるコスト削減効果が大きいものについては分割配送し、そうでないものについては分割しないように、閾値を手作業で調整できるようにした。

 これら2つの追加機能を追加する前までは、AIが作成した配送計画書を熟練担当者が現場で修正していた。このため、思ったようにはコスト(配送距離と有料道路料金)の削減効果が得られなかった。これを受けて、現場の声を反映した配送計画書をAIが作成できるようにした形である。2022年2月に2つの機能を実装し、同年5月にチューニングを施した。これら2機能を搭載した新AIの実証は、同年6月から行っている。

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