自動車の電装部品などへのメッキ加工を営む信越理研(本社:長野県長野市)は、基幹システムをローコード開発で内製した。既存の生産管理パッケージが自社の業務とマッチしなくなり、他の業務領域もシステム化が進んでいなかった。HOIPOIのローコード開発ツール「TALON(タロン)」を採用し、システムを内製したことで、例えば、受注、在庫、売上の状況をタイムリーに把握できるようになった。HOIPOIが2023年6月9日に発表した。
自動車の電装部品などへのメッキ加工を営む信越理研は、基幹システムをローコード開発で内製した。同社はこれまでもパッケージ版の生産管理システムを運用していたが、自社の業務とはマッチしなくなり、売上入力にしか使っていなかった。ほかの業務領域もシステム化が進んでおらず、情報を共有する仕組みもなかったという。
HOIPOIのローコード開発ツール「TALON(タロン)」を導入し、基幹システムを構築した。これにより、受注、在庫、売上の状況をタイムリーに把握できるようになった。製造情報についても、どのラインでどの製品を作っているか、どの作業ステージにあるかといった進捗状況を把握できるようになった(画面1)。品質情報についてもシステム上でロットを追跡可能になった。
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基幹システムの稼働開始後、複数の部門から新たなシステム化の要望が出ており、ローコード開発による内製という特徴から、迅速に要望に応えられるようになった。「要望を聞いてから1時間後にはアプリケーションが完成し、使い始められることもある」(信越理研)。
ローコードによる短期開発の例として、製品梱包時にバーコードで正しい製品が梱包されたかどうかを確認するシステムを約1カ月で開発した。同社によると、2022年にある海外の顧客に対して見た目が同じ製品を間違えて出荷してしまうミスがあり、再発防止策として開発したという。
開発に先立って業務プロセスを整理
信越理研は、基幹システムをローコードで開発する前に、まずはファイルサーバーを構築し、情報を共有する仕組みを順次導入した。この過程で業務プロセスを整理し、社内にどのような業務があるかを各現場にヒアリング。こうして自社のコア業務についてどのようなシステムが必要なのかを、業務フローとデータベースモデルの形で1カ月ほどかけてまとめたという。
基幹システムを構築する手段として、まずは自社の業務に適合する生産管理パッケージを探したが、パッケージの標準機能だけで適合する製品は見つからなかった。「そのうえ、カスタマイズで対処するとコストが高くつくことがわかった。一方、システム構築会社にスクラッチで開発を委託する方法も、コストが高くつき、なおかつリスクも高いので採用できなかった」(同社)。
こうした経緯でローコード開発ツールのTALONを採用した。旧知のエンジニアを採用し、2人体制で開発に着手。最初から全業務領域(受注から生産計画、製造指示・実績、外注・購買、出荷まで)を開発対象とした。社内業務プロセスは整理済みで、各種業務フローやデータベースモデルを作成済みだったので、アジャイル的に現場を巻き込みながらシステム化していったという。
リリースについては、全機能を同時にリリースするのはテストなどの観点からも難しいと判断し、大きく2つの領域に分けた。(1)受注から出荷までの販売販売管理の領域は、開発開始から約8カ月で稼働させた。(2)生産計画立案、指示、製造実績入力などの生産管理・製造の領域を含めた全領域の運用開始は、さらに1年程を要した。