[事例ニュース]

ENEOS、石油化学プラント運転をAIで自動化、13種の監視データから9個のバルブを同時操作

AIを用いたプラント自動運転において最大規模の取り組み

2023年7月31日(月)日川 佳三(IT Leaders編集部)

ENEOS(本社:東京都千代田区)は2023年7月31日、石油精製・石油化学プラントを自動運転するAIシステムを構築し、2023年1月から常時稼働を開始したと発表した。ENEOS川崎製油所石油化学プラント内のブタジエン抽出装置で運用しており、手動操作よりも経済的で高効率な運転を達成したとしている。同システムは、ENEOSとPreferred Networks(PFN)が共同で開発した。

 ENEOSは、石油精製・石油化学プラントを自動運転するAIシステムを、2023年1月から常時稼働させている。ENEOS川崎製油所石油化学プラント内のブタジエン抽出装置で運用しており、手動操作よりも経済的で高効率な運転を達成したとしている。同システムは、ENEOSとPreferred Networks(PFN)が共同で開発した(写真1)。

写真1:ブタジエン抽出装置の外観(出典:ENEOS、Preferred Networks)

 稼働を開始したENEOSのプラント自動運転AIシステムは、プラント内の温度、圧力、流量、製品性状など13個の運転重要因子を常時監視し、これを基に9個のバルブを同時に操作して原料処理量の変更などに伴う運転の変動を安定化させる。

 過去の運転データやシミュレータから得たデータから、複数のセンサー値とバルブ操作間の相関関係を学習し、センサー値の予測とバルブ操作の判断を自動化している。なお、今回制御対象とした要素数(13個)や、予測に用いる入力センサー数(363個)は、AI技術を用いた実際のプラントでの自動運転の事例においては最大規模の取り組みだという。

 従来は運転員が24時間体制で運転を監視し、操作の判断を下していた。これに対して新しいプラント自動運転AIシステムは、手動で操作するよりも高い精度で、経済的・効率的に運転するという。人の技量に左右されることなく、プラントを安定して運転できるようにする(関連記事ENEOS、AIによる石油化学プラントの自動運転に成功、熟練運転員の高齢化対策)。

 なお、ブタジエン抽出塔と並行して、常圧蒸留装置など他の主要プラントにおいても、運転を自動化・最適化するAIシステムを開発している。今後、ENEOSの他製油所にも展開していくほか、業務パッケージ化して外販することも計画している。

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