[調査・レポート]

IT子会社の設立目的はコスト削減、評価は“期待どおり”と“期待未満”が同率─ガートナー

親会社から見たIT子会社の課題はIT戦略立案能力と“受け身”の姿勢

2023年10月6日(金)IT Leaders編集部

ガートナージャパンは2023年10月5日、国内におけるIT子会社の実情に関する調査結果を発表した。IT子会社設立の主な目的として「人件費の抑制」「システム開発コストの抑制」「システム運用コストの抑制」が上位に挙がった。IT子会社への評価は「期待どおり」と「期待未満」が同率だった。

 ガートナージャパンは、国内におけるIT子会社(情報システム子会社)の実情を調査した。2023年5月に、国内の従業員500人以上、売り上げ規模1000億円以上の企業を対象に実施した(有効回答300社)。CIO、CTO、IT担当役員、最高デジタル責任者、最高データ&アナリティクス責任者、デジタルビジネス推進担当役員などが調査に回答している。

IT子会社設立の主な目的はコスト削減

 IT子会社の有無について、38.0%が「連結対象」「連結対象外」「ITベンダーなどと共同出資」のいずれかに該当するIT子会社があると回答した。

 IT子会社を持つ企業に設立している理由を上位3つまで聞いた。「人件費の抑制」(16.9%)、「システム開発コストの抑制」(13.8%)、「システム運用コストの抑制」(12.3%)の順で多く、IT子会社設立の主な目的がコスト削減であることが判明した(図1)。

図1:IT子会社を設立している理由の詳細(重要度の高い順に3位まで選択)(出典:ガートナージャパン、2023年10月)
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 回答結果からガートナーは、給与水準を親会社より低く抑えることで親会社がみずから行うよりも低いコストで済むだろうという考えが根底にあると考察している。「最近ではデジタルトランスフォーメーション(DX)のために新たなIT子会社を設立する例もあるが、今回の結果ではその割合はまだ限定的である」(同社)

 ガートナージャパン シニア ディレクター アナリストの一志達也氏は、「ITに携わる人材、特にAI技術、データとアナリティクスやデジタルプロダクトなどのリーダーは貴重で給与水準は高い。こうした人材を確保するには相応の待遇を用意する必要がある」と指摘。「ITを経営戦略の実現に重要な要素として位置づけて、IT子会社を戦略的に活用するために、将来どのようにITを扱っていくかを考えるべきときが来ている」(同氏)という。

親会社から見たIT子会社の課題はIT戦略立案能力と“受け身”

 IT子会社に委託している業務の遂行および目的達成についての評価を聞いたところ、「期待どおり」と「期待未満」の割合は共に49.2%で全体を二分している。

 さらに、IT子会社に関する喫緊の課題について、重要と考える順に3位までを聞いたところ、1位に選んだ割合が最多の回答は「親会社の経営課題・戦略を反映したIT戦略を立案する能力の不足」(16.2%)だった(図2)。

図2:IT子会社の喫緊の課題(出典:ガートナージャパン、2023年10月)
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 続いて、「待ちの姿勢、言われたことをやる姿勢で、積極的な提案を行う姿勢が見られない」「先進技術を習得し、その活用について積極的に提案、実装する能力の不足」「スピード感が不足している」の3項目が12.3%で並んだ。

 一方、2位と3位に選ばれた割合も合算すると、「待ちの姿勢、言われたことをやる姿勢で、積極的な提案を行う姿勢が見られない」(33.5%)が最も多く、次に「スピード感が不足している」(30.3%)、「先進技術を習得し、その活用について積極的に提案、実装する能力の不足」(26.4%)の順だった。1位に最も選ばれたの「親会社の経営課題・戦略を反映したIT戦略を立案する能力の不足」は、3位までの合算では25.6%で4番目だった。

●Next:DX/IT戦略で親会社のスタンスはどうあるべきか

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