[調査・レポート]

2022年の国内ERPパッケージ市場はレガシーシステム刷新などで前年比10.9%増─矢野経済研究所

2023年12月14日(木)IT Leaders編集部

矢野経済研究所は2023年12月13日、国内のERPパッケージライセンス市場を調査し、参入企業とユーザー企業の動向、将来展望を発表した。2022年の同市場は前年比10.9%増の1406億円だった。2023年はインボイス対応や導入プロジェクトの大型化などで、前年比11.5%増の1568億1000万円になると予測している。

 矢野経済研究所の調査によると、2022年の国内ERPパッケージライセンス市場は1406億4000万円に達し、前年比10.9%の成長となった。

 「前年の2021年にコロナ禍によるマイナスの影響が軽微となったことに加えて、先送りされた導入プロジェクトの多くが順当に始まり、2020年の買い控え分が積み重なったことが市場を押し上げた」(同社)という。2021年は前年比9.3%増の1268億6000万円で、2022年は前年から成長率が1.6ポイント上昇したことになる(図1)。

図1:ERPパッケージライセンス市場における規模の推移と予測(出典:矢野経済研究所)
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 同社は、2022年の主な市場成長要因として以下の5つを挙げている。

  1. ビジネス環境の変化や好調な企業収益などから、デジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みが戦略フェーズから実践フェーズに移り始めた。
  2. 企業のIT投資意欲が高まっており、レガシーシステムのリプレースや、DXの一環としての経営基盤への投資などの従来からあるニーズが継続した。
  3. 中堅以下の企業を中心に、インボイス制度や電子帳簿保存法改正への対応需要が急拡大した。
  4. 大手企業を中心に、これまで自社開発(オンプレミス)が中心だった生産管理システムなどで、パッケージなどの導入が進み始めた。
  5. ERPの複数モジュール採用によるプロジェクトの大型化が進む。クラウドERPを利用する企業も増加を続けている。

 矢野経済研究所は、注目ポイントとして、DXに関連したERP投資が続いている点を挙げる。「従来、IT投資の主目的はコスト削減だったが、近年では戦略的投資であるという理解がユーザー企業の間で広まっている」(同社)。

 「2020年9月に経済産業省が『持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会報告書』(通称:人材版伊藤レポート)を発表し、人的資本を企業の源泉と位置づけ、経営戦略の下で人的資本の価値を引き出す施策の必要性を説いた。実際、人材戦略を経営戦略にひもづけようとする動きがあったが、自社において人的資本の状況把握やデータ化に課題を抱えていることを認識した企業も多かった」(同社)

 同社は、経営基盤(ヒト・モノ・カネ)の効率的な管理には、経営基盤を一元管理して有効活用する施策(データドリブン経営)が有用であると指摘。「ここ数年、ERP市場が堅調に推移する背景には、リプレースであっても、単なるレガシーシステムのリプレースではなく、経営基盤を再構築するためのリプレース(攻めのDX/攻めのIT投資)が進んでいる実態がある」(同社)。

 矢野経済研究所は、この動きは大企業にとどまるものではないとし、中堅・中小企業において、きっかけが保守切れに伴うシステムのリプレースであっても、システムの刷新ないし検討を進める際にDXを意識する企業が増えていると説明。「ERPのリプレースというだけでは、経産省が2018年に指摘した『2025年の崖』問題が言うところのDXとは乖離があるが、戦略的投資としてであれば、DXに関連したERP投資は確実に進んでいると言える」(同社)。

 2023年の同市場については、プロジェクトの大型化の流れが継続していることやインボイス制度への対応などから、市場の伸び率は2022年を上回るという。同社は2023年のERPパッケージ市場は前年比11.5%増の1568億1000万円になると予測している。主な理由として、ユーザー企業のIT投資意欲が引き続き旺盛であること、2025年の崖問題や急速なビジネス環境の変化に対応するべく、クラウドERPの導入の増加が見込まれることを挙げている。

 今回の調査では、ERPパッケージベンダーの国内ライセンス売上高(クラウドのサブスクリプション売上高を含む。コンサルティング/SI/保守サポートなどの関連売上高は含まない)をエンドユーザー渡し価格ベースで算出している。調査期間は2023年6月~9月で、調査方法として同社専門研究員による直接面談(オンライン含む)と文献調査を併用した。

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